シリア・アサド政権の治安部隊が5日、同国の首都ダマスカスで、イスラム抵抗運動ハマスの全事務所を強制的に閉鎖した、とカタールの衛星テレビ・アルジャジーラの報道としてイラン学生通信が伝えた。
パレスチナのガザ地区を実効支配するハマスは、イスラエルへの抵抗勢力としてイランとシリアから手厚い支援を受け、その指導部を長年ダマスカスに置いてきた。

しかし、反体制派への弾圧を強めるアサド政権と次第に距離を置くようになり、今年1月にはシリア寄りとされた最高幹部・マシュアル政治局長が同職を辞任し、シリアを出国。そのときダマスカスに複数あったハマスの事務所は一部閉鎖された。その後、ハマス指導部はシリア反体制派を支持するエジプトやカタールとの関係を強め、今回のシリア当局による措置は、その意趣返しとも受け取れる。

一方、これまでイスラエルに対する「抵抗の鎖」の一端を担ってきたハマスの離反に、抵抗の旗手を自認するイランは苦渋を強いられている。
ハマスは1987年、エジプトに本拠地を置くスンニー派のイスラム主義組織・ムスリム同胞団のパレスチナ支部として設立されたという経緯から、シリアの反体制派に属するムスリム同胞団系の組織とは友好関係にある。こうした背景から、現在のハマスの措置をやむをえないとする見方がイランにはある。

イランのアラブ問題専門家アリーアスギャル・モハンマディー氏はニュースサイト・ハバルオンラインの中で、ハマスがシリアを去ったことを肯定的に捉え、「ハマスはシリア政府とともに反政府勢力に敵対すべきでも、過去数十年に渡って最大の支援を受けてきたシリア政府を裏切り、反政府勢力に組すべきでもない。ハマスに期待すべき最良の措置は、沈黙することである」と述べた。

モハンマディー氏はまた、「パレスチナ問題は、イスラム諸国の内部問題より重要であり、パレスチナの抵抗運動がイスラム諸国の内部問題の犠牲になるべきではない」と訴えた。
イランとハマスの関係はぎくしゃくしたものとなったが、途切れたわけではない。ハマスがシリアの反体制派と共闘することなく、黙してダマスカスを去ったことは、イランへの配慮とも受け取れる。だが、今後もハマスの「沈黙」が続くとは限らない。シリア政府軍は最近、ダマスカス郊外にある3つのパレスチナ人難民キャンプを攻撃し、数十名もの死傷者を出し、ハマスの強い抗議を受けた。こうしたことが繰り返されれば、ハマスが「沈黙」を破り、ひいてはイランとの関係断絶に発展する恐れもあるだろう。(大村一朗)