白ヘルメットを手にするハディジャさん。(2021年4月、同僚隊員撮影)

◆救命・医療活動に奮闘する女性たち

戦闘機が投下する爆弾、立ち上る黒煙。血まみれの子ども、泣き叫ぶ住民……。そんな光景が、日常の一部となったシリア。爆撃の現場にいち早く駆けつけ、負傷者の救助にあたるのが、地元市民からなる組織、ホワイトヘルメット(民間防衛隊)だ。イドリブを含む反体制派拠点の北西部一帯で活動し、隊員は3000人を超える。うち1割は女性だ。地元記者の協力でネット回線を通して女性隊員たちを取材した。
取材・構成:玉本英子/アジアプレス、協力:ムハンマド・アル・アスマール

イドリブのホワイトヘルメット隊員のハディジャさん(25)。2017年に起きたハーン・シェイフンでの化学兵器攻撃が最も過酷な現場だったと話す。(2021年4月、家族撮影)

◆姉を空爆で失い、ホワイトヘルメット隊員に

ハディジャ・アルカタニさん(25)は、教師を目指す学生だった。5年前、姉がいた建物が政府軍の空爆を受けた。瓦礫(がれき)をかき分けて捜索してくれたのがホワイトヘルメットだった。姉は遺体で見つかったが、彼らの懸命な姿に心を打たれた。人の助けになりたいと、看護訓練を受けて隊員に加わった。

「この地域では女性が負傷した際、肌を見られたくないとの理由で男性の救護を拒む人もいます。女性隊員の存在意義は大きいのです」とハディジャさんは語る。

ホワイトヘルメットの男性隊員。空爆や砲撃の現場に駆け付け、犠牲者を救出する。同じ場所に連続して爆撃が加えられることもあり、危険と隣り合わせだ。(シリア北西部・ホワイトヘルメット公表写真)

 

彼女にとって忘れられないのが、92人が死亡した2017年のハーン・シェイフンでの化学兵器攻撃だ。ハディジャさんは、被害者の体についた毒ガスを水で洗い流し、点滴や酸素吸入器をつける処置にあたった。

「子どもたちが次々と死んでいくのを見て涙が止まらなかった。でも泣いているようでは務まりません。夜通しの救助を続けました」

イドリブをはじめ各地に33か所のホワイトヘルメットの女性センターがあり、およそ300人の女性隊員が、女性や子どもの健康相談や応急治療にあたる。(2021年4月、ハディジャさん撮影)

◆キャンプの医療支援とコロナ対策

北西部のトルコ国境近くには避難民キャンプが点在し、100万に及ぶ人びとがテントに身を寄せる。劣悪な生活環境から皮膚病を患う者が多い。彼女たちはキャンプをはじめ、各地にある女性センターで、休日を除く毎日7時間、医療活動に従事する。最近は新型コロナの感染者が発生し、マスク着用や手洗いなどの重要性も伝えている。

冬の避難民キャンプでは、ストーブで暖をとるが、換気の状態や燃料の質の悪さもあって、吸い込んだ煙で呼吸器を患う住民が少なくない。隊員は、酸素吸入器や気管支拡張薬などで対応。(2021年4月、ハディジャさん撮影)

 

ホワイトヘルメットを資金面で支えるのは、欧米諸国や各国の人道機関からの支援だ。反体制派地域を拠点としていることから、中立性を指摘する声もある。訓練課程では、救護を必要とする人には誰であっても救いの手を差し伸べる姿勢も学ぶ。

一般隊員には月150ドル(約1万6000円)が支給される。しかし、救出中の現場に連続して空爆や砲撃が加えられることもあり、危険と隣り合わせだ。