シリア北西部イドリブ北方バティティーヤにある「アル・タハ避難民キャンプ」では約1500人が避難生活を送っている。ほとんどが南部での攻撃から逃れた人たちだ。(12月上旬ムハンマド・アル・アスマール撮影)

◆戦火に追われ、明日見えぬ仮設テント生活

内戦がまもなく10年におよぶシリア。反体制諸派の拠点地域、北西部イドリブでは、シリア政府軍(アサド政権)やロシア軍からの攻撃が続き、家を破壊されるなどした住民たちがトルコ国境そばの避難民キャンプに身を寄せる。その総数は確認できただけで96万人を超える。(※)
冬の到来を前に、現地の状況について、イドリブ北方バティティーヤにある「アル・タハ避難民キャンプ」の人びとにネット回線を通して聞いた。(取材・構成:玉本英子、取材協力:ムハンマド・アル・アスマール

◆国内避難民キャンプの日々、支援乏しく

キャンプを統括するアブドゥル・サラムさん(左)に状況を聞くムハンマド・アル・アスマール記者(右)(12月上旬バティティーヤにて・住民撮影)

アブドゥル・サラムさん(47歳)運営責任者:
この避難民キャンプは昨年の9月に設置され、約1500人が生活しています。ほとんどが昨年夏にシリア政府軍(アサド政権)による攻撃から逃げてきた南部アル・タハ村の住民たちです。

イドリブの冬は氷点下近くになり、また降雨量も増す。テント生活は非常に厳しい。(12月上旬バティティーヤにて・ムハンマド・アル・アスマール撮影)

イドリブでは国連が直接的な支援活動をすることはありません。しかし、間接的な形で国連などと連携する組織が支援を行ないます。私たちのキャンプではトルコの非政府組織(NGO)が水を供給してくれています。
ここの避難民の多くは隣国トルコに行きたいと考えていますが、難民に国境は閉じられています。また、密かに国境を抜けて脱出することは危険をともないます。

◆ぜい弱な医療状況、新型コロナの不安も

2020年12月時点のイドリブ近郊の勢力図。ナスーブさんはアル・タハ村からバティティーヤに移り、避難生活を送る。(地図作成:坂本卓)

イドリブでも新型コロナウイルスの感染者が確認されています。ただ今のところ、このキャンプ内では感染者は出ていないようで、いまのところは安堵しています。とはいえ、ここには診療所はありません。イドリブ市内の病院へ行く必要がありますが、遠く、お金もないので、たどり着けません。医療体制が、ぜい弱なキャンプで新型コロナの感染者が発生したら、深刻な状況になるでしょう。

このキャンプが出来て1年たち、テントも破損が酷くなりました。でも新しいテントは手に入りません。12月に入り、イドリブは朝晩氷点下近くになります。暖房機になるようなものがありません。去年は廃材のプラスチックを燃やして暖を取ろうとする人たちに健康被害が出て、大変でした。食料も足りないし、冬をどう生き延びればよいのか、人びとは心配しています。日本の人たちに避難民のことを知ってもらえたらと願っています。
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