◆「もう逃げのびる気力もありません」避難民女性の嘆き

75歳になるナスーブさんにとってテント暮らしは過酷すぎる。(12月上旬バティティーヤにて・ムハンマド・アル・アスマール撮影)

ナスーブ・アルサマラさん(75歳):
昨年8月、村が攻撃されました。畑は燃やされ、家を破壊されました。爆撃から逃れた時に転んでしまい足を骨折しました。動けないところを、若者が車に乗せてキャンプまで連れて行ってくれました。知っているだけでも甥や隣人たちが爆撃で命を落としました。骨折した後、病院へ通えず、歩けなくなりました。

今、35歳の娘が、キャンプに近いオリーブ畑で収穫の仕事をして、必要品を購入してくれます。
日に日に寒くなってきました。去年の冬、強風でテントが破れたことがありました。冷たい雨がテントの中に入って、身体の芯まで冷えきって、辛いなんてものではなかった。

ナスーブさん。テントの前にあるのはソーラーパネル。充電して、夜にテント内を照らすライトに使う。(12月上旬バティティーヤ避難民キャンプにて・ムハンマド・アル・アスマール撮影)

歩けなくなってしまい、今はテントの前に座って、そこを通る人たちを眺めながら、一日を過ごします。少しでも心が晴れるように、昔のことを思い浮かべます。

私は村では、家畜を育てていました。毎日のように親戚や友人の所へ出かけて行って、お茶や手作りのお菓子を囲んでおしゃべりをするのが大好きでした。セメントでできた壁、屋根、ガラスの窓やカーペットを敷いた床のある家も恋しい。これまでの普通だった暮らし。でも今の私には夢のようです。

もし、再び攻撃があったとしても、私は歩けないし、逃げることはできません。人生の最後を、こんな過酷な場所で過ごすことになるとは。本当に悲しくてなりません。この戦争とは何だったのでしょうか。いま、私たちは明日も見えないなかで、ただ、その日の命をつなぐばかりです。

※註:イドリブ一帯のキャンプの避難民の数96万人超。(イドリブ避難民調整チーム2019年調べ)

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