パレスチナ暫定自治区のガザではイスラエル軍による攻撃が続き、これまでに民間人を含め100名を超える死者が出ている。先月末に起 きたイスラエル人入植者少年3人の誘拐・殺害と、これに対する報復と見られるパレスチナ少年の殺害事件が、イスラエル軍とイスラム原理主義組織ハマスの間 の戦闘へと拡大したと報じられている。だが「報復の応酬」「憎悪の連鎖」という言葉だけでは語れない問題の根深さがその背景にある。「イスラエルによる暴 力的な占領の日常と、パレスチナ人のあいだに渦巻く怒りの延長線上に今回の事態がある」とガザ在住で人権活動家の弁護士ラジ・スラーニ氏(60)は話す。 現地では何が起きているのか、スラーニ弁護士とネット電話でインタビューをした。 【聞き手:土井敏邦】(インタビューは7月10日)

ラジ・スラーニ弁護士。ガザ在住で人権活動家としても知られる(2001年1月・ガザ市内・パレスチナ人権センターにて撮影・土井敏邦)

ラジ・スラーニ弁護士。ガザ在住で人権活動家としても知られる(2001年1月・ガザ市内・パレスチナ人権センターにて撮影・土井敏邦)

◆24時間繰り返されるイスラエル軍からの砲爆撃

土井:今のガザの状況を教えてください。

ラジ・スラーニ弁護士:(以下、ラジ弁護士)
この新たな「戦争」は、3人のユダヤ人入植者が誘拐され殺されたことのきっかですが、イスラエルは事件があったヨルダン川西岸のヘブロン市だけではなく、西岸全域、ガザまで攻撃の対象としたのです。

西岸では大量にハマスの指導者たちを逮捕し、ヘブロン市とその周辺の村々に外出禁止令を敷き、家を一軒一軒捜索し始めました。また住民の家々を急襲 し、住民を脅迫し、ハマス指導者たちの家屋を破壊しました。さらに以前ガザで誘拐されたイスラエル兵との捕虜交換で釈放された元政治犯のパレスチナ人数百 人を再び逮捕しました。イスラエル軍はパレスチナ自治政府の治安警察も無視して、少しでも不審だと思ったら、たとえ自治政府の人間でも射殺します。やりた い放題できるのです。

3人のイスラエル人少年の誘拐・殺害事件でイスラエルに怒りが渦巻き、その報復で16歳のパレスチナ人少年が犠牲になりました。それがまた西岸で怒 りと暴力の新たな波を引き起こしたのです。また同時に、西岸の事件とはまったく関係のないガザ地区でも、「ハマスの指導者たちを暗殺する」とイスラエルは 公言しました。そしてイスラエルの世論は復讐を要求したのです。

イスラエルは10日前(6月30日)からF16戦闘機やドローン(無人航空機)、戦闘ヘリコプターなどによってガザ攻撃を開始しました。ガザ南端の ラファから北端のベイトハヌンにおよぶ地域の空爆です。爆撃によって住民のあいだに恐怖心を植えつけ、ガザには安全圏はないと感じさせるというものです。 イスラエル軍はまずハマス武装メンバー6人を殺害しました。ハマスはそれを受け入れることができません。それでパレスチナ人側は報復することになりまし た。イスラエルが挑発し、この「戦争」は始まったのです。

イスラエルは当初から、ハマスが反撃を開始することを望んでいました。それに応戦し降伏させようと考えていたのです。空爆のやり方は、猛烈に激しい 爆撃です。ガザ全体を爆撃し、標的は確実に殺害し、破壊する。イスラエルは12時間のあいだに24人を殺害し、220人を負傷させました。

また85軒の家屋を破壊しました。例えば私がハマスやイスラム聖戦のリーダーであったとすれば、私がそこにいようといまいと、私の家を爆撃するので す。戦闘機によってです。ガザ中部のハンユニスのアブ・カワレ一家がその一例です。5人の子どもを含む7人を殺害し、28人を負傷させました。

ベイトハヌンのハマッド一家も同様に、近所の男性がコーヒーを飲んでいて、傍にハマッドの妻と母親がその部屋にいました。そのとき空爆され、孫たちを含め6人が死亡したのです。