武装組織イスラム国(IS)が支配するイラク北部の都市モスル。ISはどのように町を支配し、人びとはどういう状況で暮らしているのか。市内に暮ら すアブ・ムスタファさん(仮名・35)との電話インタビューの第2回めを掲載する。外部との通話が発覚すれば危険が及ぶため、身元が特定される情報は一部 ぼかしてある。【アルビル・玉本英子】

◆モスルでは公開で処刑や鞭打ちはどのぐらい行われていますか?
公開刑は頻繁に行われています。軽いものではひげを剃ったら40回の鞭打ち刑です。窃盗の場合、4万イラクディナール(約4000円)以下の物品を盗んだ ら鞭打ちですが、5万以上になると手首を切られます。処刑はナイフで首を切るか、ローラー車でひき殺すかです。モスルでは携帯電話の使用が禁止されていま す。見つかればスパイ容疑で死刑になります。

窃盗犯に対する手首の切断刑。これらはハッド刑を呼ばれるが、一部のイスラム諸国ではこうした刑が存在し、ISだけが特殊というわけではない。治安が混乱した場所では強盗も横行し、見せしめという形であっても厳しい取り締まりは犯罪抑止力ともなっている。ただし冤罪も含む公正な裁判が行われているかなどは不明。また同性愛をビルから突き落としたり、姦淫の罪で石を投げつけて殺害するという公開処刑も横行している。写真の一部をぼかしています。(ニナワ県モスル・IS映像)

窃盗犯に対する手首の切断刑。これらはハッド刑を呼ばれるが、一部のイスラム諸国ではこうした刑が存在し、ISだけが特殊というわけではない。治安が混乱した場所では強盗も横行し、見せしめという形であっても厳しい取り締まりは犯罪抑止力ともなっている。ただし冤罪も含む公正な裁判が行われているかなどは不明。また同性愛をビルから突き落としたり、姦淫の罪で石を投げつけて殺害するという公開処刑も横行している。写真の一部をぼかしています。(ニナワ県モスル・IS映像)

 

◆どのような戦闘員を見かけますか?
通りには外国人戦闘員の姿を見かけます。日本人は見たことはないですが、東洋系はいます。バングラディシュ人、アフガン人、アメリカ人などもいるようです。イラク人の戦闘員も多いです。

1か月前、私のところに戦闘員のひとりがやってきて「金がいる。俺のヤズディ教徒の女を買ってくれ」と言われました。1300ドルで、私は拒否でき ませんでした。その男が先日、ISに処刑されました。「ヤズディを戦闘員以外に売った罪」とのことでした。幸い、私は罪に問われることはなく、その女性を 妹として家族に招き入れて一緒に暮らしています。

◆市民は何を求めているのでしょうか?
モスルにはごく少数ですが高齢者のキリスト教徒が暮らしています。ISに税金を払えばかれらは暮らすことができるからです。
※注:ISは昨年、モスルを制圧すると、キリスト教徒追放を布告。家屋や財産は没収され、町に残った一部の高齢者のキリスト教徒には、税金が課せられている)

しかし数日前、キリスト教徒でマリアンと言う名の女性が何者かに殺されました。5日前にはモスルで有名な部族の部族長(シェイク)が暗殺されました。理由は分かりませんがISがやった、と私たちは思っています。

私は収入があるので、他の家庭に比べるとずっと恵まれていますが、私の妻や、子どもたちは、なぜこんな苦しい生活をしなければいけないのかといつも 泣いています。でも、ISは市民がバグダッドなどへ行くことを許さないのです。特例として、病人が支配地域を出ることを許す場合がありますが、保証人を数 人用意しなければならず、その病人がモスルに戻ってこないと何らかの処罰を受けることになると聞きました。

市民はISに対して怒りを感じています。なぜ私たちは外国人戦闘員に支配されないといけないのでしょうか。とにかくこの苦しみが終わってほしい。私 たち市民は、このまま彼らの勝手を許していけないと思っています。でも同時に何かすれば殺されるという恐怖感にさいなまれています。方法は分かりません が、モスル市民と外の人たちとで、ISを追い出せたらと願っています。国際社会が助けてくれることを願っています。
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