次に住民の大きな負担になっているのは、食糧の他、現金や物資の供出だとして、取材協力者は次のように述べる。

「『突撃隊』には、白米とトウモロコシに野菜汁程度だが食事がちゃんと出ていた。そのための食糧は各道が出すことになっていて、一般住民が支援を強いられている。また、現金とコメ、建設作業に動員された人たちが使う手袋や作業着を出せと言われる。額や量は決められておらず、『自発的に誠意を見せよ』というやり方だ。しかし、あれを出せこれを出せと、人民班長が毎日のように家訪ねて来るし、競争を促すため支援実績のグラフが張り出されている」

三池淵郡への電気の集中もひどい。両江道では住民地区への電気供給は、昨年11月から完全に止まった「絶電」状態が6カ月も続いている。幹部は「三池淵特区の工事を支援するため、電気はすべて回している」と説明しているという。

「冬季に現地に行って内装工事現場を回ったが、セメントが凍らないうちに乾燥させるため、電熱コイルで壁を温めていた」と、調査した協力者は述べる。

◆大学卒業生を強制配置

また、人口が少ない山麓の僻地に都市を作るため、三池淵郡へ無理な移住=「進出志願」を進めている。恵山医科大学の今年卒業の学生は、全員が強制的に三池淵への配置されることになったとして、協力者は5月中旬に次のように報告してきた。

「新しいアパートを建て、現代的な新病院まで作るそうだが、あんな僻地の農村で暮らしたい若者がいるだろうか? 学生の親たちは不満が強く、娘の場合は急ぎ結婚させて他所に出したり、病気を理由に忌避しようとした。すると当局は、学生たちの居住地移動手続きを個人でやることをやめさせて、大学で一括して、三池淵郡に『無理配置』しています」

今、北朝鮮は苦境に立たされている。経済制裁で輸出の9割を断たれたところに、昨年の農業の不作で、世界に食糧支援を頼まなければならない状況だ。にもかかわらず、まったく急ぐ必要のない観光地開発工事に金正恩氏は固執している。

経済制裁下でも、自力で経済建設をうまくやっているとアピールすることが目的だろう。そのしわ寄せは、ずっと負担を強いられている住民に向かっている。

北朝鮮北部地域地図 (アジアプレス)

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