働きたい、でも仕事がないというカナアーン(ガザ地区・2019年撮影:古居みずえ)

カナアーンたちは船主にボートを借り、取れた魚を人数分で割るという共同作業をしていた。6マイル(11キロ)以下の近海では大きな魚は獲れず、ほとんどは小魚ばかりだ。これを人数分で割ると、一人が得られるお金はほんのわずか。全く獲れない日もあるという。

魚が獲れないばかりではない。漁には常に危険が伴う。一度荒波でボートがひっくりかえったことがあった。ネットが体に絡まれば死ぬ危険もあったという。

ここで漁をしているのは新しく始めたようなカナアーンたちだけではない。仕事が全くないために、一度は漁をやめた漁師たちが再び帰って来ているという。

イスラエルに厳しい漁業領域を儲けられたことで、沖に出られず、大きな魚を獲ることができないため、多くの漁師が仕事を離れた。しかし他に仕事は全くなく、生活のためには少ない漁獲量であってもやらないと生きていけなくなったのだ。漁師の数は現在、3000人にのぼる。

カナアーンたちの3度目の網には少し大きな魚がとれた。それでも家族の食卓には上がっても、市場に売るほどは獲れなかった。

「ガザの状況はひどい。2008年~09年のイスラエルの侵攻があった年より以前では、まだ人々は家もあり、お金もあった。でも10年以上にわたるイスラエルによるガザ封鎖、そして3度にわたる侵攻後で状況は違ってしまった。働こうにも仕事がない。どんな仕事でもやるから、働きたい」 カナアーンは海のかなたを見ながら話した。
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