バグダッド市内の交通渋滞はすさまじい。交通信号が機能していない上に、最近、急増したマイカーで、バグダッド市内の道路は毎日、大混乱になっている。あちこちの交差点で、われ先に進もうとする車がつっかえ、罵りあうドライバーたちの姿が見られる。フセイン政権時代は、みんなもっと交通マナーを守ったのに、と、誰もがこぼす。

この渋滞にさらに拍車をかけるのが、わがもの顔で侵入してくる米軍の車両ハンヴィ、いわゆる軍用大型ジープだ。ハンヴィに乗った米兵は、周囲の車に銃を向け、周囲の車に下がるよう命じる。
 ドライバーたちは怪訝そうに米兵を見つめながら、しぶしぶ道をあける。反米武装勢力は、戦車や装甲車に比べて装甲の薄いハンヴィを、路肩の仕掛け爆弾やロケット弾攻撃で狙う。

4月27日、市内で米軍車両が炎上中という現場に向かった。
米軍が化学倉庫の調査にきていたところ、扉を開けたとたんに倉庫が爆発し、米兵、民間人あわせて12名が死傷したという。
(写真右:ハンヴィから奪った米軍の迷彩シートを、歯で噛み切ろうとしている。なにもそこまでしなくても、と思うのだが。)

私が現場に到着したときには、ハンヴィ4台が黒こげになっていて、米軍はすで車両を放置して撤収していた。
若者たちはハンヴィに向かってレンガを次々に投げつけ、子どもが車両の屋根にあがって歓声をあげている。

男たちは「ファルージャの報復だ!」と口々に叫ぶ。
そして、カメラに向かってポーズをとる者、ハンヴィの部品を懸命に解体して持ち帰ろうとする者。現場は騒然としていた。
 (写真右:ハンヴィの残骸。米兵2名が死亡した。)
私が撮影していると、青年がハンヴィにガソリンをかけてさらに炎上させた。いつ爆発するかも知れず、私は数回シャッターを切って、現場から立ち去ることにした。

通りの向こうに出ると、現場を眺めていた老人が私に言った。
「若者たちは、占領への不満をどう表現していいかわからないのです」
みんな、占領に疲れきっている。そんな思いをあらわすかのようにハンヴィから燃えあがった炎が、黒煙となって空に立ちのぼった。
(04年4月30日)