現在イラク北部とクルド自治区を取材中の玉本が、イラク国内の日常の息吹を日誌と写真で伝える集中連載

5月9日、アンサール・スンナ軍はウェブサイト上で斎藤昭彦さん(44)のパスポート写真を公開し、拉致したことを明らかにした。
私は大きなショックをうけた。日本人が「民間警備員」という形でイラクに来ていたこと、そして私がスンナ軍のメンバー2人と会ったばかりだったからだ。
会った場所は、アルビルの治安総局本部とアクレ刑務所。治安総局と交渉を重ねた結果、実現したものだった。

アンサール・スンナ軍、ハウージャ部隊にいたカミル・トルキ・マールフ(35)は、米軍を仕掛け爆弾で何度も狙い、3月6日に逮捕された。
イラク戦争開戦当初から、米軍のイラク攻撃を「不当な侵略戦争」と考えていた彼は、親戚にスンナ軍のメンバーがいたため、自分も何かしたい、と志願した。「いまも米軍との戦いを、ジハード(聖戦)と信じている」と話す。

昨年10月末に「イラクの聖戦アルカイダ組織」に殺害された香田証生さんについて訊いてみた。「彼に罪がなかったのなら、それ(殺害行為)はジハードではない。しかし、もし彼に罪があれば、それはジハードだ」と語った。
「罪」とは、米軍に協力しているかどうかだ、と彼は言う。

面会取材の申請は容易ではなかった。どういう意図か。誰と会いたいのか。治安総局のいくつもの質問をクリアしなければならなかった。
とくに刑務所での取材は、イラク国内も含めてメディアに許可を出したことがないということだった。
取材の意図を説明したうえで、「最近の重要事件に関与したメンバーの話がききたい」と申請して面会許可がでたのがムハンメド・ルメト・アベトアイサ(27)だった。

アンサール・スンナ軍キルクーク部隊副隊長の彼は、3月28日に逮捕された。これまで学校など5ヶ所に爆弾を設置、2月には、警察車列を狙った爆弾で28人を殺害している。
ムハンメドは貧しく、日雇いの仕事で生活をつないでいた。モスクで出合った男に「いい仕事がある」と声をかけられはじめたのが爆弾の設置だった。50ドル程度の報酬を受け取り、攻撃を繰り返すうち、信頼を得て、彼は副隊長にまで上りつめた。

聖戦を信じる中枢部分の下に、家族を米軍に殺された恨みを持つ者や報酬をもらう末端の構成員が広がる。そんな構造が見えてきた。そこに自爆志願で、周辺国からやってくるアラブ人義勇兵たちが加わる。
「いまは後悔している」とムハンメドは言った。だが、彼が殺した犠牲者は、帰ってはこない。
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アンサール・スンナ軍キルクーク部隊副隊長 ムハ
ンメド・ルメト・アベトアイサ(27)。2月、警察車両を
狙った爆破攻撃で28人を殺害。(4月27日 アクレ
刑務所で)
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アンサール・スンナ軍がウェブサイトで公開した、
斎藤昭彦さん拉致に関する声明文。