実は、90年代中盤から昨年まで10年間、北朝鮮の食糧価格はほぼ常に中国の市場価格を少し上回る程度で一定していた。
ウォンベースの米価は、この10年で40倍も上がったが、朝鮮ウォンの下落によるもので、その時点での中国元換算の価格には大きな変動はない。
ちなみに私が1998年3竏窒S月に咸鏡北道に三週間あまり滞在した折り、闇市場に毎日のように通ったのだが、この時の白米1キロがざっと70ウォンだった。

当時の元レートは1元=25ウォンだったので、元換算すると、咸鏡北道の米価は2.8元ということになる。当時の吉林省の市場米価は1キロ2竏窒R元だった。

リムジンガン記者の取材によると、昨年春の清津市の白米の価格は約1000ウォンで、中国1元は約350ウォン。つまり元換算では約2.85元となる。ほぼ10年を経ても米価は中国元換算では大差ないのである。

羅津市のジャンマダン(当時は闇市場)で中国産のコメを売る女性たち(1998年3月 石丸次郎撮影)

羅津市のジャンマダン(当時は闇市場)で中国産のコメを売る女性たち(1998年3月 石丸次郎撮影)

1キロ70ウォンの値札が見える。(1998年3月 石丸次郎撮影)

1キロ70ウォンの値札が見える。(1998年3月 石丸次郎撮影)

 

このように、北朝鮮の市場の米価が、中国東北部の米価に連動していたのは、言うまでもなく、支援・貿易・密輸を含めて、北朝鮮にとって中国が最大の食糧導入国だったからだ。さらに言えば、食糧市場のみならず、現在の北朝鮮の経済自体が、ほぼ完全に中国の市場経済と連動しているのであるから、中国の物価動向が北朝鮮の物価を左右するのは当然のことだ。
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