揺れるカシミール 廣瀬和司の緊急現場報告~モスクに兵士が土足で乱入 (2008/09/13)

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【女性が殴られたため、抗議する女性たち】
(撮影:広瀬和司)

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モスクに兵士が土足で乱入
【スリナガル発(インド側)】
朝、ホテルで原稿を書いていると、ラル・チョークでまた催涙弾が発射されたり、棒で人びとを追い払ったりしている、という話を友人からの電話で知る。

地元のカメラマンに連絡すると、大したことは無い、とのこと。ネットカフェで原稿を送り、バスで市中心部に出ると、店が閉まっている。

連携委員会は、土曜、日曜は学生の試験があるからストはしない、ということだったがどうしてなのか。町の人の話を総合すると、昨日2人死んだことを受けて、自発的にやっているらしい。

友人のNGOの事務所の近くに行くと、人通りが消え、雰囲気が明らかに違うのがわかる。地元のカメラマンもそちらの方向から歩いてくるので、何かがあったに違いない。そのカメラマンや、NGOの友人に何があったのか聞いても、「後で説明するから、早く撮影の準備をしろ」の一点張りだ。
アミラ橋を渡り、人だかりに行くと、「中央予備警察隊(CRPF)の兵士が靴を脱がずに、しかもお祈りの時間にダルガ(イスラム聖廟)に入ってきた」という。

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【兵士たちと若者は至近距離で対峙した】(撮影:広瀬和司)

午後2時ごろ、ラル・チョークの近くにあるサライバラ市場で独立を訴えるデモを2、300人でしていたところ、CRPFの兵士が阻止しようとデモに介入してきた。そのときデモ参加者を追いかけ、聖廟に入ってきたらしい。

聖廟には警備のため警察官が常駐しているが、その彼も兵士を制止しようとして、殴られた、という。そして、兵士たちは聖廟の管理人を殴り、窓ガラスを割り、壁を壊して去っていったという。

「見ろ、奴らはこんな小さな子供まで殴るんだ」と周囲の人びとは、子供を私のほうに差出し、見せる。
彼の名はピルザダ君(12才)と言い、彼は学校に迎えに来た母親とアミラ橋を渡っていると、ちょうどデモを排除しているときだった。

「まさか、女性や子供は殴るまいと思って進みました」と母親のファミーダさんは語る。しかし、彼女の目論見は外れ、兵士は彼女を棒で殴り始めた。ピルザダ君は母親をかばって、彼女の体に覆い被さった。だが、それでも兵士は殴るのを止めず、ピルザダ君の泣き声を聞いた周囲の人がやっと2人を助けた。2人は病院に運ばれたが、幸い大した怪我はなかった。

「私の息子に何か起きたらただじゃおかない。私は死ぬことなんて怖くないのよ」と、叫んだ。
モスクに土足で踏み込まれた人びとの怒りは収まらなかった。
兵士たちが引き上げると、また大きな交差点に出てきて気勢を上げ、タイヤを燃やし始めた。そして、橋の反対側にいる兵士たちを挑発し始める。
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