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【時間がたつにつれて対立は激しくなっていった。写真では見えにくいが奥の赤い日よけがある店の下に座っているのが、殺されたジャヴッド・アフマッドさんらしい】(撮影:広瀬和司)

私の見解では、警察は強気に追い払おうとしていたものの、殺そうとする意図はなかったと思う。カシミールでよくある正規軍や中央予備警察隊CRPFによる発砲とは違う。

だからといって許されることではないが。この件に関して、スリナガルの警視監は発砲の理由を「若者たちが火炎瓶を使おうとしていたから」とコメントしたが、私が現場で見る限り、そんな形跡は一切見られなかった。

私が危惧するのは、この事件がインドの中でカシミール人がカシミール人を殺す、というあたかもインドのカシミールに対する政策とは関係が無いような報道や、受け取られかたをされることだ。

若者たちが投石するのは、独立運動を力で弾圧するインドへの抗議のためで、カシミールの中での内部対立だからではない。
そんなことを考えていると、知り合いのカメラマンが人びとに囲まれて詰問されている。

どうしたのかと訊くと「メディアの中には写真やビデオを警察に売って、それを使って警察が後でデモの参加者を特定している、という噂がでているんだ。残念ながら、そういうことをしている奴がいるらしい」という。

私もその後の行進の様子をビデオで撮影していたところ「撮影を止めろ!」と同じ理由で怒鳴り込まれた。しかし、すぐに別の男が「気を悪くしないで欲しい。悪用する奴がいるものだから。君は君の仕事を続けてくれ」とフォローしてくれた。

病院から遺体が戻ってきて、3?離れた殉教者墓地に運ばれることになった。イスラム教では、死者は死んだ日の日没前に埋葬されるのがしきたりである。遺体を先頭に1?ほどの行列ができる。途中でCRPFの陣地が数ヶ所あったが、そこでは若者たちが「お前らが殺したんだぞ!インドの犬ども出て行け!」と叫び、今にも陣地を壊しそうな雰囲気だったが、周りの大人たちが必死に止めていた。陣地の中にいる兵士たちは刺激しまいと、直立不動のままだった。

どこへ行っても「どこのメディアだ?」という声が相変わらずかかる。その背景にはインドの国内メディアがカシミールの状況について正確に伝えていない、という不信感からきているようだった。カシミールでは毎日のように、一般市民が兵士たちから殴られ、蹴られ、時には殺されているのに、インドの国内新聞やテレビでは、戦闘があってゲリラを何人殺したかしか報じないことが多いからだ。私がインドの国内メディアの者だったら、吊るし上げられていただろう。
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