揺れるカシミール 廣瀬和司の緊急現場報告/2008/09/06

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【ナワタ地区で石を投げる若者たち。このとき、死者がでるとは誰も予想していなかった】(撮影:広瀬和司)

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【スリナガル発(インド側)】
朝11時ごろ、地元のTVカメラマンから下町のナワタ地区で、若者たちが投石をしているという電話がかかってきた。
現地に着いてみると、投石の形跡もあり、若者は集団でいて警官隊と距離をとって集まっているものの、そんなに積極的なものではなかった。
1時間ぐらい経って、やっと石がポンポン飛んでくるようになった。投石は危険である。音がしないので、どこから飛んでくるのかしっかり軌道を見極めないといけないし、加速度が付いているので、当たるとかなりの衝撃だ。頭などに当たると、一つ間違えば、死んでしまう。

メディアの人間は、基本的に警官隊の側からしか撮影ができない。投げる側が、至近距離から撮影されて特定化されるのを恐れ、撮影を拒否するからだ。
いい加減にしろ、と言わんばかりに、警官隊はパトカーを前に押し出して若者たちを追い払う。しかし、道はあらかじめ大きな石を置いて通行を妨げられており、パトカーが止まった所に、投石の雨霰が降る。

そんなことを繰り返して、業を煮やしたのか、今度は催涙弾やゴム弾を使って若者たちを追い払い始めた。SHO(警察署長)らしい男が「楯を持っている者から前に進んで追い払え!」と30名ほどの警官隊に命令する。しかし、警官たちは及び腰でなかなか前に行こうとしない。そのたびにSHOが檄を飛ばして、警官たちを前へと追い立てる。

実は若者たちのなかには、彼らの知り合いも多くいるし、怪我もしたくないので、気が進まないのだ。それに、警察といっても現場の下級(上級の警察官はIPSといって中央から派遣される)の警察官はカシミール人で、独立運動に賛成な者がほとんどだ。この投石の少し前に会った違う署のSHOは、パキスタン帰属派のリーダーであるギラニ氏を支持している、とはっきりと述べていた。彼らだって仕事なので騒動があるいじょう、取り締まらなければならないのだ。
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