この青果市場の責任者によれば、この市場が出来たのは17年前、イラン・イラク戦争終結後間もない頃で、テヘラン市が、困窮する庶民の食生活を確保するため、市街各地区に設置したのが始まりという。安さの秘密は、中間業者を省き、生産者から直接、市議会が定めた価格で仕入れているからだという。

なるほど安さの秘密はそれかと納得していた矢先、ある日の新聞朝刊の第一面に、青果市場で中間搾取がまかり通り、野菜や果物の値が不当に吊り上げられているとの記事が載った。

テヘラン市が定める青果市場への野菜の卸売り価格があまりに安く、市価との格差がありすぎるため、青果市場のブースを市から賃借りしている店子たちが勝手に販売価格を吊り上げ、仕入れ値の2倍から3倍もの値段で売っているのだという。そして現状では、市がこうした行為を取り締まるのは法律上不可能だという。

仕入れ値の2、3倍で売られているにもかかわらず、青果市場の野菜の値段は市価の半額である。現在の市価、つまり、外の八百屋の値段がいかに高いかが分かる。
買い物に来ていた白髪の男性は言う。

「野菜や果物はいつもここで買う。安いからね。市街の八百屋は庶民の予算を超えているよ。急なお客があったり、急ぎで何かの野菜が必要なときしか外では買わない」
人々は青果市場を安いと信じ、買い物に訪れる。だが実際には、青果市場の価格は普通に過ぎず、市価が高すぎるから、相対的に青果市場を安いと感じるだけなのだ。

「どこもそうだよ。まともな値段で売ってるとこなんかない。俺なんかこの前、言い値36000トマン(3600円)のズボンを22000トマン(2200円)まで値切って買ったんだ。元値はいくらなんだろうね」
知人のイラン人はそう言って笑う。
この国の市場価格は、どの商品も、庶民の財布にはあまりに重い。