さらに、二〇〇九年一月二三日には、平壌を訪問した中国共産党の王家瑞対外連絡部長と会見した写真を配信した。公開された写真を見る限り、かなり痩せた印象はぬぐえないものの、金正日が外国の要人と会談できるほどに健康を回復したのは確かなようである。
重要なのは、この「金正日異変」情報を、厳しい情報統制の下にある北朝鮮の民衆が、どの程度知っているのか、そしてどのように受け取っているのかである。

北朝鮮の官製メディアからは決して伝わってこない「北朝鮮の世論」を知る必要があると思うからだ。
北朝鮮の人々の敏感な反応
北朝鮮の建国六〇周年記念日の二〇〇八年九月九日、筆者は取材のために中国の鴨緑江沿いの国境都市・遼寧省丹東市にいた。その日の晩のニュースで記念式典に金総書記が姿を現さなかったことを知った。

翌日、丹東に出て来ていた北朝鮮の男性二人を探し出してインタビューすることに成功した。
一人は数日前に平安南道から親戚訪問のために中国に出て来ていたAさん。

金正日が建国記念日の行事を欠席したことは、私と同様に中国で知ったわけだが、その感想を訊くと、興奮気味に次のように語ってくれた。
「私の住んでいる地方でも、九月九日に向けて会議や行事が続き、平壌の閲兵式(軍事パレード)に参加するために体躯のいい青年たちが選抜され行進の練習を続けていました。建国六〇年という節目の大切な式典に、金正日将軍様が出て来なかったんだから、その理由について、国中の人間がいろいろと憶測するでしょう。重病説もあっという間に全国に広まりますよ」
(つづく)

注1 金正日が直接参加する会議・視察などの行事。北朝鮮において「一号」は金正日との関連を表す。例えば「一号道路」は、金正日が〈お通りになる〉、最優先に整備された道路のことである。

中国要人との会見写真は、金正日がまだ執務できることを辛うじて示すことができた。(2009年1月 朝鮮中央通信が配信した写真より)

中国要人との会見写真は、金正日がまだ執務できることを辛うじて示すことができた。(2009年1月 朝鮮中央通信が配信した写真より)

 

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