Q:九二年度に「貨幣交換」をした時(注1)、一番深刻に打撃を受けたのが華僑だったと言われています。家にあった金が全て無効になってしまったそうですね。
カン:あの時代のわれわれ朝鮮人は、国が与えてくれるものだけを貰い、おかゆを食べて暮らしていた時代で、商売を知らなかったんですよ。だから華僑たちは中国製の薄い手拭い一枚を、コメ数キロという(高い)値段で売っていました。

当時は人民元の価値も低かったので、華僑たちは朝鮮ウォンをたくさん現金で持っていました。だから朝鮮ウォンをたくさん貯め込んでいたところに「貨幣交換」があって大損したのです。

しかし今は売り上げも全てすぐに中国元に換えて、それを持ってまた中国に行って品物を仕入れて持ってきて、そうやって稼いでいるんですよ。だから回しているお金は基本的に中国元なので、「貨幣交換」そのものでの損はそんなにないでしょう。

しかし、売上金の回収で苦労したはずです。私たちが華僑から商品を仕入れて売ったとしたら、売り上げは全部旧ウォンでしょ。

商品代金の支払いを旧ウォンでするというと、華僑は「受け取れない」と言います。そうしたら朝鮮人の商売人は「いらないなら諦めな。われわれは払えないよ。払えないから、あんたらはあんたらのやりたいようにやりな、法に訴えようがこのお金(旧紙幣)でしか渡せない」と言うわけですよ。こうなると華僑は損をすることになります。

Q:そんな諍いがあちこちでたくさん起きたんじゃないですか?
カン:はい、あちこちで騒ぎが起こって修羅場でしたよ。

Q:そうした中で、殺人事件が起きたり、自殺をしたりといった話は聞きませんでしたか?
カン:そういう話は聞きませんでしたが、こんなことがありました。華僑から商品を仕入れる場合、普通半額を先に支払います。ところが残りの半分が未払いなのに「貨幣交換」が始まった。

華僑はそっくりそのまま、新しい紙幣で持ってくるように要求するわけです。そうすると朝鮮人も(商売を知らなかった)昔とは違いますから「そうすることはできない」と断るわけですよ。そうすると華僑が家に押しかけてきて、商品のテレビをぶっ壊すは、他の商品もぐちゃぐちゃにするは、という事件がありました。
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