モハメッド・サレムくん(14)は、1年前、買い物中に武装勢力の発射した迫撃弾が落下し負傷した。友人はその場で即死だった。(2010年4月/撮影:玉本英子)

イラク陸軍第2師団のパトロール部隊の装甲車に同乗して、南東部のカラマ地区へ向かった。モスル市内でも貧困層が多く暮らす地区だ。
地区にあるモロア小・中学校には、現在600人の小中学生の児童・生徒がいる。

バグダッドでは、治安が極限まで悪化した数年前に比べると、避難して転校していた子どもは戻り始めているが、ここの学校は貧しい家庭の子どもが多く、避難すら出来ないほうが多かったという。

6年A組では3割近くが家族や友人を殺された経験を持っていた。親戚や知人が誘拐されたという例も少なくなかった。
モハメッド・サレムくん(14)は、1年前、親友と雑貨店で買い物中に、武装勢力の迫撃弾が店の前で炸裂した。

「ドンという爆発がした。気がついたら傍らにいた友達の脳の肉片が外に飛び散っていた。今でも思い出し、夢でうなされる」と、うつむいた。

30年前に建てられた校舎はところどころコンクリートが剥がれ落ちたりとかなり古びている。教室に並ぶ机やチョークの跡の残る黒板、グラウンドで遊ぶ子どもたちの姿など、私の目にうつる光景は日本の学校とほとんど変わらなかった。(2010年4月/撮影:玉本英子)

担任の教師は、子どもたちの将来が心配だと話す。

「毎日、どこかで爆弾が爆発するかわからない。誘拐されるかもわからない。そんな恐怖ととなりあわせの日々が、子どもの心理的な負担となってのしかかっている。しかし心の傷のケアまで手が回らない」

裕福な層が住む地区の人びとは、治安悪化とともに町を離れて国外や、安全なクルド自治区に避難したり、移住していった。
だが、ここの住民たちは、危険であっても街から逃れる余裕などなかった。
(つづく
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