夜間パトロールに向かう部隊。暗闇の中では、どこから攻撃があるか分からないため、兵士たちの表情にもいっそう緊張感が感じられた。(2010年4月/撮影:玉本英子)

装甲車はスピードを上げて市内中心部を走り続ける。
角を曲がるたびに検問があるかのようだ。直線道路でも200メートルおきに軍がチェックしている。
こうした治安強化作戦が効果をあげ、武装勢力の攻撃は減ってはいるが、なくなったわけではない。いまも警備の間隙をついた自動車爆弾や迫撃弾による攻撃がある。

一般の警察とは連携して効率的な警備活動が出来ないものなのだろうか。
「警察は弱すぎる」とマフムード少佐が言う。
「警察にはテロリストの協力者が入り込んでいるから信用できない」

彼に続いて、装甲車に乗っている兵士たち全員が口をそろえて言った。
実際に、警官が武装勢力に情報を与えて、要人が襲撃される事件があいついできた。
兵士よりも警官は接触しやすいため、金銭をもらったり、家族を殺すと脅されたりして協力させられる場合が少なくないのだ。

かつては治安悪化で多くが営業できなくなっていた食堂や商店も徐々に営業を再開するようになった。いまも夜間外出禁止令が出ているため、夜には人通りはほとんどなくなる。(2010年4月/撮影:玉本英子)

米軍、多国籍駐留軍、イラク軍、治安警察、宗派、イラク人の抵抗組織、国外の元バース党幹部、シリアやイランの情報機関、外国人の過激なイスラム武装勢力...。

誰がどこを狙い、そして、自分が誰から狙われてるのかも、わからない状況だ。もう、むちゃくちゃである。
そして、それぞれが確信する「勝利」がなにを意味するのかも誰にも分からなくなっていた。

はっきりしているのは、米軍が撤収すれば、銃を向けるのも、向けられるのも、すべてイラク人どうしとなることだ。
アメリカが始めた戦争で、どうしてイラク人どうしが殺しあわなければならなくなってしまったのか。(つづく)
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