襲撃事件のあった教会には自爆犯が最後に立った場所の床がくぼんだままになっていた。

襲撃事件のあった教会には自爆犯が最後に立った場所の床がくぼんだままになっていた。

 

― イラクでは、宗教はイスラム教だけなのでしょうか? ―
(玉本)
90%以上の人びとがイスラム教徒のシーア派、スンニ派を信仰している人たちなのですが、3~5%の人達がキリスト教徒です。そのほかにはゾロアスター教系の宗派が数多くあります。

イラクはどうしてもイスラム教のイメージがありますけれども、そうではなく様々な宗教がある多宗教、多民族国家だといえると思います。
今回バグダットを取材して感じましたが、今、厳しい状況におかれているのが、少数派のキリスト教徒だと思います。今でも武装勢力の殺害対象、ターゲットになっています。

キリスト教徒たちがなぜターゲットになるかというと、それはアメリカ軍やイギリス軍等と同じ宗教を持っているということで、占領に加担している、という決めつけから殺害対象になっているんです。

いまも週に1人くらいの割合でキリスト教徒が殺害されています。自宅にいるところを狙われたり、または通勤途中で襲われたり、誘拐されたりするような事件が多いのです。去年(2010年)の10月にカトリック教会で襲撃事件がありました。

その教会はバグダッド市内でも非常に治安状況の良い場所にあるのですが、ミサの最中に、武装勢力がその教会を襲撃して人質をとり、治安部隊と戦闘状態になりました。

襲撃したのはアルカイダ系の武装勢力でした。5人の武装勢力のメンバーが自爆を行い、教会にいた2人の司教も含めて46人のカトリック信者が殺害されたのです。
非常に治安のいい地区での残忍な襲撃事件に、バグダッド市民は本当に大きなショックを受けていました。

また、イラクのキリスト教徒の人たちは、リベンジ、いわゆる復讐をしない人たちです。もちろん少数派だからということもありますけれども、イスラム教スンニ派やシーア派の争いとは違うということを、イラク市民たちは知っています。
それなのに教会が襲われ、多くの人たちが殺害されたということにもショックを受けていました。
(つづく)
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