(2009年大統領選挙後の改革派デモ。政府の徹底的な弾圧により鎮静化し、以降、改革派は政治の舞台から一掃された。2009年6月撮影:佐藤 彰)

 

次期国会議員選挙の投票まで3ヶ月を切ったイランで、政界内部の動きが活発化している。

イランの選挙はこれまで、国会選挙であれ、大統領選挙であれ、常に保守派と改革派の争いだったが、来年3月2日に予定されている第9期国会議員選挙に改革派の姿はない。2009年の大統領選挙後の騒乱で、改革派の主要政党は非合法化され、多くの改革派政治家が逮捕された。11月には改革派各派の合同会議が中止に追い込まれ、改革派の間には次期選挙への参加を絶望視する声が広まっていたが、13日、改革派調整評議会のアリモハンマド・ガリバニ議長が、改革派の選挙不参加を正式に表明した。

一方、保守派は次期選挙に備え、大きく三つの派閥を形成し、互いに牽制しあっている。ラリジャニ国会議長を始めとする伝統保守派の勢力「原理主義連合」と、メスバフ・ヤズディ師率いる「イスラム安定戦線」、そしてアフマディネジャド大統領の派閥だ。

イスラム安定戦線が、あくまでイスラム革命の理念への思想的統一を目指す保守強硬派であるのに対し、原理主義連合は、革命理念を軸とした社会的・政治的合意を目指す中道派であり、2009年の騒乱においても、その中核となった改革派指導者たちに対して寛容な姿勢を取った。こうした姿勢がヤズディー師に原理主義連合を離脱させ、新派閥形成に向かわせた。そして、この両派のいずれもが敵視しているのが大統領派だ。

アラブ諸国の民衆革命を『イスラムの目覚め』と称し、それが1979年のイラン革命に端を発したものと自負するイランの体制指導部は、第9期国会選挙を「イスラム民主主義」の模範としてアラブ諸国に誇示するとともに、西側諸国に対しては、イランの体制の磐石さをアピールし、また、2009年の騒乱後初めての選挙を成功させることで、国民の信頼回復を内外にアピールしたい考えだ。

そのため国民に大々的な選挙への参加を呼びかけているが、保守派一色の選挙に市民の反応は鈍い。
保守派の一部からは、制裁を始めとする西側の圧力が苛烈さを増す今こそ、改革派も含めた国家の団結を望む声も聞かれる。しかし、立候補者の資格審査を行なう護憲評議会の議長を務めるジャンナティ師は、最近のテヘラン金曜礼拝の中で、「2009年の騒乱で陰謀を企てた者たちに、神が来世で苦しみを与えるよう望む」と表明している。
【佐藤 彰】

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