髄一の繁華街タイムズ・スクエアにある新兵募集所の看板。5月12日 宮崎紀秀撮影。(写真はデジタル加工してあります)

 

人とネオンの洪水の中で、険しい表情をした紳士の看板が訴える―「君が必要だ(I want you)。」
観光地タイムズ・スクエアの一画に、日本の交番を少し大きくしたくらいの建物がある。
タイムズ・スクエアにある新兵募集所である。建物の側面には、愛国心を煽るに十分であろう大きさと星条旗が輝いている。
初老の男性の看板は、第一次世界大戦時の募兵に使われたポスターを模している。

同じキャッチフレーズが今日でも使われているということは、かの大戦から一世紀の時を経ても、国も人も大して変わっていないということか。アメリカが戦争を遂行中であることを、国内で常に実感できるわけではない。
この国にとっての戦争は、多くの日本人が第二次世界大戦から連想するであろう、国家同士の総力戦とはちがう。

タイムズ・スクエアにある新兵募集所の側壁に掲げられた星条旗。米国が戦時国家であることを悟らせる。5月12日 宮崎紀秀撮影。(写真はデジタル加工してあります)

 

しかし、繁栄と歓楽の中で目にする新兵募集所は、アメリカがやはり戦時国家であることを思い出させる。戦争が平和の代償、とは、あえて言わない。
ただタイムズ・スクエアの華やかな賑わいと、世界のどこかで誰かが殺し、殺されていることとが、同時進行しているのだけは確かである。
【ニューヨーク=宮崎紀秀】

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