戦闘で道が遮断され、小麦粉が届かず、主食のナンが不足している。早朝4時からパンを買うため、列に並ぶ女性たち(シリア北東部4月上旬撮影:玉本英子)

 

7月4日、京都精華大学で、イラク・シリア映像報告の講演会をさせていただいた。
日本では、アフガニスタンやイラクでの戦争に比べてシリア内戦への関心は低い。アメリカ同時多発攻撃事件への「報復」として始まった米軍のアフガン空爆、アメリカのイラク侵攻と自衛隊派遣。メディアは大きく伝え、戦争を問う市民運動も広がった。

しかし、内戦で10万人を越す死者、数百万の難民が出ているシリアのことを、日本のメディアはどれだけ伝えているだろうか。
講演では取材映像をできるだけ多く見てもらいながら、イラクとシリアについて話した。

イラクでの自爆攻撃で夫と息子を失った女性。事件が起きたときに取材し、今年、再び出会った。事件から8年が経つが、彼女は毎日、喪服を着ているのだという。「あれから時間が止まったまま」と、いまも悲しみに向き合っていた。

内戦が続くシリアは、今年春に取材した北東部の映像を見せた。
食糧不足で早朝4時から主食のナンを買うため、静かに列に並ぶ女性たち。電気がほとんど供給されず、真っ暗な部屋で食卓を囲む家族。小学校が閉鎖され、家で自習を続ける小学生。連日の空爆から逃れてきた一家。
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