アレッポは武装勢力が割拠 「イスラム国」恐れ住民脱出続く

日本人と見られる男性・湯川遥菜さんがイスラム過激派組織「イスラム国」に拘束されたシリア北部アレッポは、現在、いくつもの武装勢力が戦闘を繰り広げる激戦地である。今年1月に同地域を取材した玉本英子氏に現地の動静について聞いた。(アジアプレス編集部)

イスラム武装勢力のISIS(イラク・シリア・イスラム国=現「イスラム国」)の支配地域につながる道の検問所では、クルドの人民防衛隊の女性戦闘員が厳しい取締りをおこなっていた。 (アレッポ北部にて2014年1月撮影・玉本英子)

イスラム武装勢力のISIS(イラク・シリア・イスラム国=現「イスラム国」)の支配地域につながる道の検問所では、クルドの人民防衛隊の女性戦闘員が厳しい取締りをおこなっていた。 (アレッポ北部にて2014年1月撮影・玉本英子)

 

◇反政府勢力同士でも戦闘が激化

編集部:現地の状況を教えてください

「私が取材したのは、アレッポ県の中でもトルコ国境に近いアイン・アル・アラブという町で、クルドの人民防衛隊(YPG)が死守しています。これら の地域から、シリア政府軍はすでに撤退し、町の周辺は『イスラム国』が支配地域を広げています。自由シリア軍なども加えて、反政府組織間での戦闘が続いて います」

◇恐怖支配で住民脱出

編集部:「イスラム国」の存在を現地の住民はどのように見ているのでしょうか。

「私が取材した当時から、『イスラム国』による斬首や公開処刑の映像がネット上にアップされており、過激派という強いイメージがありました。

『イスラム国』が制圧した隣のラッカでは、厳格なイスラム法による統治が敷かれています。女性は外出時にニカブ着用厳守、化粧やジーンズ着用の禁止、男性の髭剃りを禁ずるために理髪店を強制閉鎖するなど、彼ら独自のイスラム法が適用され、破った場合は厳罰に処されます。

ラッカからアイン・アル・アラブに避難してきた人々は、『イスラム国』によるこうした支配の他、拷問や処刑についても口々に語っていました。人々は『イスラム国』を恐れ、支配地域から次々に脱出しています」

◇銃器の所持があだになる可能性も

編集部:「イスラム国」に拘束されたとされる湯川さんの行動について、ジャーナリストとしてどのように見ますか?

「湯川さんはシリア内の他の武装勢力と行動をともにしていたという情報があります。『イスラム国』も反政府勢力ですが、シリアでは反政府勢力同士も激しい勢力争いをしているので、戦闘に巻き込まれれば拘束もあります。

彼自身が武器を持っていたという情報もあり、そうであれば拘束された場合、戦闘員と判断されても仕方がないと思われる部分もある。もし彼がジャーナリストであれば、従軍取材であっても自ら銃を所持することは考えられないと思います」

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