イラク北西部の村で武装組織「イスラム国」(IS)に拉致され、シリアの少年軍事訓練所に入れられたヤズディ教徒(ヤジディ教徒)の子どもたちは、イスラム教に強制改宗させられ、毎日コーランの勉強と銃の扱い方などを覚えさせられた。教官はISの処刑映像などを何度も見せたという。3月に脱出したダハム君(仮名14)に避難先のイラク北部で話を聞いた。【玉本英子・2015年4月】(全3回)

シリア・ラッカの少年軍事訓練所から脱出してきたばかりのヤズディ少年ダハム君(14歳・写真右)と弟(10歳)。教官に弟と戦うことを命じられ、本気で戦わないと殺すと言われた。彼は素手で戦い、弟の顔を殴り歯を折ってしまった。(イラク北部・4月末撮影:玉本英子)
◆訓練所で何を教えられたの?
ダハム:毎日厳しい日課があって、コーランの勉強のほかに、いろいろな武器の使い方を学ばされた。カラシニコフ銃の扱い方や撃ち方も教えられた。
訓練所を視察に多くの戦闘員がやってきた。スーダン人、ロシア人、アラブ人、アメリカ人、ドイツ人もいた。僕たちは普段シャツとズボンを着ていたが、見学者が来たり、撮影の時などは迷彩色の戦闘服を着せられ、頭に黒の鉢巻をつけなければいけなかった。
あるとき、教官に弟と戦うことを命じられたことがあった。本気で戦わないと殺すと言われた。僕は弟と素手で戦い、顔を殴って歯を折ってしまった。「お前たちはペシュメルガと戦うのだ、殺すのだ」と毎日教えられた。
【※ペシュメルガ=イラク・クルド地域の防衛部隊】