親を失う子どもたちは、守り育ててくれる存在を失い、心に深い傷を負う。イスラエルで、2歳から10歳の時に父親を軍事作戦で失った25人の子ども たちを対象に継続的になされている研究によると、半数の子どもに、父親の死から3年半以上経ってもなお、行動と感情に重大な問題がみられた(59)。

親が「無事に」帰還しても、子どもたちは、安心できない。アフガニスタンおよびイラクからの帰還米軍兵士のうちPTSDの症状に苦しむ人は30万人 に達している(60)。兵士が戦場で受けた心の傷は、家族にも戦場の疑似体験をさせることになる。3~4歳の子どもが、飛行機やヘリコプターが飛んでいる と、親のするようにベッドの下に隠れたり、戦争の悪夢にうなされ、死傷することを恐れたりする(二次的トラウマ化)(61)。

心に傷を負っている帰還兵は、薬物使用やアルコールに依存することが多い。これらの行動は、社会生活をさらに困難なものとし、失業に至りやすく、家族の生活基盤を危うくすることにつながる。

また、親しい人との関係を保てなくなり、穏やかな家庭生活を営むことが難しい。家族への暴力を目撃することは、子どもに-戦場の子どももそうであったように-自身が直接暴力の対象とされる以上の精神的なダメージを与えうる。

イラクに派遣された米軍兵士のおよそ30%に相当する1万人は女性で、3人に1人は子どもをもつ母親だった。彼女たちも、イラクではいつ攻撃されるかわからない危険な状況におかれ、死傷している。
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