また、ミャンマー人には「姓名」の姓、つまりファミリーネームがなく名前だけの社会ですが、そのこともまだ日本では一般的に伝わっていません。

ミャンマー人で一番有名な人物はアウンサンスーチーという女性です。長いですが、これも一つの名前です。日本では、「アウン・サン・スー・チー」「アウンサン・スーチー」のように「・」(なかぐろ)を入れて記述している場合があります。これもあやふやな報道の一つでしょう。

2015年の総選挙で大勝したアウンサンスーチー氏は事実上、ミャンマーの最高指導者になった(撮影:宇田有三)。

2015年の総選挙で大勝したアウンサンスーチー氏は事実上、ミャンマーの最高指導者になった(撮影:宇田有三)。

 

例えば、アメリカ人で John Smith さんという人物がいたとしましょう。それを「ジョン・スミス」と日本語で記述する場合、姓のスミスと名前のジョンを区別するために「・」を使うのは適当でしょう。でもそれはミャンマーの場合は当てはまりません。

日本のメディアの中には、ミャンマー人の名前の場合でも「・」を入れるのは、「日本語表記の慣用句」として定着しているので、必ずしも間違いではない、としている説明もあります。

軍政時代のミャンマーであるならばそれで通用していましたが、2011年の(仮の)民主化以降、報道の自由がある程度保証されたミャンマーの実情を伝えるにあたって、日本の慣用表現を優先するのか、より正確な現地の生の情報を伝えるのか、どちらを優先するのかメディアの姿勢が問われていると思います(※研究者の発表物に関しては、従来の表記を優先する事例も見られます)(つづく)
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