商店の発電機。電力不足を発電機で補うしかないが、収益の多くは燃料代で消えてしまう(2017年7月、ガザ地区ハンユニス市で撮影 土井敏邦)

 

◆農業への影響

農業にとっても電力は灌漑用水の確保には死活問題だ。 ガザ地区北部のベイトラヒヤ町の農民アハマド・ハリーマ(72)はビニールハウスでキュウリなどを生産している。アハマドの畑だけではなく、近隣の農地を含めた40ドナム(4ヘクタール)のために12時間、エンジン式のポンプを回し続けなければならない。

その燃料代は一日1200シェケル(約340ドル)。電動のポンプを使えれば、経費は20%で済む。しかし電気不足でそれもできない。 同じベイトラヒヤ町でイスラエルとの国境近くの農民、アクラム・アブクーサ(43)は、いちご、すいか、トウモロコシなどを約16ドナム(1.6ヘクタール)の畑で生産している。

かつて1日に6時間電気が使えたとき、農民はその電気が来る夜に畑に出て作物の苗を植えた。しかし2~4時間しかない今はそれもできないほど作物のための水が不足している。 「この状態では畑の半分しか作物は作れないし、その質も落ちる。近い将来、農作物は生産できなくなるだろう」とアクラムは言う。

アクラムがトウモロコシ畑へ私を導いた。 「通常、トウモロコシは1日に2時間の水が必要です。しかし今は、1時間以下です。なんとか成長していますが、生産量は半分ほどで、しかも質もずっと落ちます」 さらに彼は何も作られていない畑へ向かった。

「この畑は放置されています。水がないからです。果樹も枯れています。農民は作物を作れないんです」 封鎖状態にある200万人のガザ住民の生存を支えているのは、ガザ地区内で生産される安価な野菜だった。しかしその野菜生産を支えてきた農民たちが、この電力危機で生産を続けられるかどうかの瀬戸際にまで追い込まれている。
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