◆光る監視の目

本土となにも変わらず穏やかに見える占領地だが、警官と検問所の数は多い。軍人と軍用車両も、日常的に目にする。主要道路沿いのところどころに置かれた移動式の検問所では、外国人に対しパスポートチェックが入念に行われている。

エル・アイウンの入場門。この直前に、検問所があった(2018年筆者撮影)

西サハラを知らなければ、またこれまでの経緯を良しとするならば、占領地はモロッコの延長線にある居心地のいい観光地であり、ビジネスチャンス溢れる新天地だ。しかし、西サハラが抱える問題に気づき看過できなければ、ここは常に緊張感を強いられる場所となる。

検問所での尋問は、時に、鋭く厳しい。流暢な英語で、視線を外すことなく質問があびせ続けられたこともあった。どれだけ穏やかに見えようとも、ここは軍事力をもって占領された地だ。「望ましくない人物」に向けた監視の目は、あちこちで光っている。

変わったのは外見だけではない。西サハラの占領地では、モロッコ風の街づくりが進められながら、過去の記憶も消されようとしている。(続く)

 

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