◆防空警報で一斉に地下シェルターへ
4年以上におよぶ戦争は、子供の心に深刻な影響を与えている。 戦闘が激しい東部地域で家を失って避難してきたり、家族や親戚がミサイル攻撃で死傷したりした児童もいる。兵士として前線任務に就いていた父親が戦死した家庭もある。学校ではカウンセラーを配置し、心のケアにも取り組んでいるという。
防空警報が鳴ると、校舎での授業は中断され、児童・生徒は一斉に教室を出て、校舎わきの防空退避シェルターに向かう。扉の先に地下につながる階段がある。(2026年5月・クリヴィー・リフ:撮影・玉本英子)
体育館の下にあるこのシェルターは旧ソ連時代に作られたものを改修。空調設備も整えた。むき出しだった壁は、教師と職員が明るい色でがペイントした。(2026年5月・クリヴィー・リフ:撮影・玉本英子)「多くの子供が心に傷を抱えています。教室で授業をしていても、屋外で遊んでいても、防空警報のサイレンが鳴ると地下シェルターに急いで移動します。そのたびに笑顔は消え、恐怖を強いられます。戦争の現実を突きつけられるのです。これが子供たちの『日常』の一部になってしまっています」
校長はそう言って、シェルターに案内してくれた。
同校には3つの防空シェルターがあり、新設されたもののほか、1つは旧ソ連時代の冷戦期に設置された核シェルターを改修したものだ。地下への階段を降りると防護扉があり、その先には学年ごとの教室が細長く連なっていた。地下でも授業が続けられるようになっている。むき出しだった壁は、教師や職員が色とりどりにペイントした。窓のない地下でも明るい気分で過ごせるように、との思いからだ。
細長く伸びる廊下の先に学年ごとの教室が連なる。ミサイルにも耐えられるよう分厚い壁と天井に囲まれている。(2026年5月・クリヴィー・リフ:撮影・玉本英子)
2年生の地下教室。警報が解除されるまで、ここで授業を続ける。1日何度も発令される警報のたびに、地下のシェルターに退避する。子供たちには大きなストレスになっている。(2026年5月・クリヴィー・リフ:撮影・玉本英子)クリヴィー・リフ市もまた、他の都市と同様にミサイルや自爆無人機シャヘド(ロシア名ゲラン)の攻撃にさらされ、市民に被害があいついでいる。昨年4月には集合住宅前の児童公園にミサイルが着弾し、子供9人を含む14人が犠牲となった。
クリヴィー・リフは、ウクライナ中部に位置し、南北に120km以上伸びる細長い都市として知られる。鉱山があり、鉄鋼業が盛ん。ゼレンスキー大統領の出身地でもある。(地図作成:アジアプレス)
クリヴィー・リフへのミサイルや自爆無人機による攻撃では、市民の死傷者も絶えない。昨年4月には集合住宅前の児童公園にミサイルが着弾し、子供9人を含む14人が犠牲となった。翌日、多くの住民が花やぬいぐるみを手向けに現場を訪れていた。(2025年4月・クリヴィー・リフ:撮影・玉本英子)ブラティスラブくん(6年生)は、頻繁に飛来する無人機シャヘドが怖いと話す。
「シャヘドが飛んでくるとブィーンというプロペラ音が聞こえてくるんだ。もしかして学校や僕の家で爆発するかもしれない。あの音がしている間は心臓がはじけそうになり、ずっと怯えている」
「頻繁に飛来する無人機シャヘドが怖い。プロペラ音が聞こえると、心臓がはじけそうになり、ずっと怯えている」と話すブラティスラブくん(6年生)。(2026年5月・クリヴィー・リフ:撮影・玉本英子)
この学校で学び、侵攻後の戦闘で兵士として戦死した卒業生を追悼する碑板が校舎の壁に掲げられていた。ここにも戦争と隣り合わせの現実がある。(2026年5月・クリヴィー・リフ:撮影・玉本英子)