◆たくさんの苦労と努力があったからこそ

世界に先駆けて同性婚が認められたオランダ。のちにベルギー、スペイン、フランスなどの国々が続いた。そのオランダでは90年代半ばから、世界最大級の同性愛者の祝祭「アムステルダム・プライド」が開催されてきた。LGBTQの社会的認知と権利擁護をアピールし、自由と多様性を祝う一大イベントで、ゲイパレードには各国からのLGBTQも参加する。侵攻前、ジーナはウクライナからのグループの一人として招待された。

「アムステルダム・プライド」のステージに立つ。「オランダがLGBTQに寛容な社会になったのは、たくさんの苦労と努力の積み重ねがあったから」と語る。(2017年・アムステルダム・写真:本人のインスタグラムから)

「大観衆の前で『ウクライナの代表、ジーナ・スマイルです!』と紹介され、拍手に包まれたときは胸がいっぱいになり、涙がこぼれ落ちた。みんながプライドを持ち、心を寄せ、互いを認め合えるイベントなんてウクライナじゃできないから。

でもその時、思ったの。オランダだって、100年前、いや50年前はウクライナと同じだったんじゃないかって。LGBTQを自然なこととして受け入れる社会が出来上がるまでには、たくさんの人たちの計り知れない苦労と努力があったということ。今日のアムステルダムでの素晴らしい日は、その延長線上に成し遂げられたものなんだって気づいた。ありのままの自分でいられることと社会のありよう、その意味と価値をあらためて見つめ直したの」

ジーナは濃いアイシャドーで目じりを塗り、まぶたに大きな黒いつけまつげを張り付けた。彼女の青い瞳が、くっきりと引き立った。(つづく)

ジーナ・スマイルの「スマイル」には人びとを笑顔にしたいという思いがある。また独自の設定があり、「オーストリアのフォン・スマイル男爵がジーナと結婚式を挙げた夜に亡くなった」という自身が作ったスマイル男爵伝説による。(2025年4月・オデーサ・撮影・玉本英子)
オデーサでただひとつ営業を続けるゲイクラブのステージに立つ。(2025年4月・オデーサ・撮影・玉本英子)
ウクライナにはこれまでキーウ、オデーサ、クリヴィ・リフ、ドニプロ、ハルキウ、ドネツク、ルハンシクにゲイクラブがあったが、コロナ渦に加え、2022年のロシア軍の侵攻で閉店があいつぎ、状況は大きく変わったという。(地図作成:アジアプレス)

パート2 >>>ウクライナのLGBTQ(2) 戦死したゲイ兵士パートナーの苦悩 戦時下のドラァグクイーン、ジーナの涙

★新着記事