◆たくさんの苦労と努力があったからこそ
世界に先駆けて同性婚が認められたオランダ。のちにベルギー、スペイン、フランスなどの国々が続いた。そのオランダでは90年代半ばから、世界最大級の同性愛者の祝祭「アムステルダム・プライド」が開催されてきた。LGBTQの社会的認知と権利擁護をアピールし、自由と多様性を祝う一大イベントで、ゲイパレードには各国からのLGBTQも参加する。侵攻前、ジーナはウクライナからのグループの一人として招待された。

「大観衆の前で『ウクライナの代表、ジーナ・スマイルです!』と紹介され、拍手に包まれたときは胸がいっぱいになり、涙がこぼれ落ちた。みんながプライドを持ち、心を寄せ、互いを認め合えるイベントなんてウクライナじゃできないから。
でもその時、思ったの。オランダだって、100年前、いや50年前はウクライナと同じだったんじゃないかって。LGBTQを自然なこととして受け入れる社会が出来上がるまでには、たくさんの人たちの計り知れない苦労と努力があったということ。今日のアムステルダムでの素晴らしい日は、その延長線上に成し遂げられたものなんだって気づいた。ありのままの自分でいられることと社会のありよう、その意味と価値をあらためて見つめ直したの」
ジーナは濃いアイシャドーで目じりを塗り、まぶたに大きな黒いつけまつげを張り付けた。彼女の青い瞳が、くっきりと引き立った。(つづく)



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