◆住民運動つぶしを狙う公安警察と企業の情報交換
この「警察による住民運動潰し指南」、「警察と企業との不当な癒着」は、後に前出の4人が原告となった国家賠償請求訴訟(「大垣警察市民監視違憲訴訟」、後述)の、準備段階の「証拠保全申立」でシーテック社から得た、公安警察との情報交換・意見交換の「議事録」から浮かび上がる。
第1回の情報交換・意見交換で、公安警察側は大型風力発電施設の建設に反対する地元住民の三輪さんと松島さんについて、「風力発電に拘らず、自然に手を入れる行為自体に反対する人物」で、「岐阜県内で活発に自然破壊反対や希少動物保護運動にも参加しており、岐阜コラボ法律事務所とも繋がりを持っている」と伝えて問題視し、地域の様々な社会問題、人権問題に関わってきた「ぎふコラボ西濃法律事務所」との関係もことさら強調している。
また発電施設問題とは無関係だった近藤さんについて、「大垣市内に自然破壊につながることは敏感に反対する近藤ゆり子氏という人物がいるが、御存じか」と、わざわざ名前を挙げて情報提供し、「60歳を過ぎているが東京大学を中退しており、頭もいいし、喋りも上手であるから、このような人物と繋がると、やっかいになると思われる」と断じて、問題人物に仕立て上げようとした。

そのうえで、「このような人物と岐阜コラボ法律事務所との連携により、大々的な市民運動へと展開すると御社の事業も進まないことになりかねない。大垣警察署としても回避したい行為であり、今後情報をやり取りすることにより、平穏な大垣市を維持したいので協力をお願いする」と、シーテック社側の警戒心を煽り、今後の情報交換を持ちかけた。シーテック社側も「当社としても、今後、地元交渉を精力的に開始する予定であることから、色々な情報交換をお願いしたい」と応じた。
「議事録」の末尾には、「大垣警察署への対応終了」後、シーテック社社員が中部電力大垣営業所の所長と総務課長を訪ね、「警察への対応を完了したことを報告した」と記されている。公安警察との情報交換・意見交換を、親会社の中部電力も知っていたことがわかる。
また第2回では、シーテック社側からの「近況報告」として、風力発電施設の建設予定地に近い上鍛冶屋地区の自治会長に反対派の三輪さんが選出されたことを、「ショッキング」だと述べ、「今後の進め方」としては「交渉可能地区や役場等から話を進め、周囲を固めることにより上鍛冶屋地区を孤立化させる。周りの地区から、『なぜ賛成できないか』の声が上がるよう仕向けたい」などと、露骨な地域分断策を表明している。
そして、「今後も地元交渉を精力的に継続する予定である。大垣警察署から頂ける情報があれば連絡をお願いしたい」と要請し、公安警察側も「了解した」と応じた。
公安警察側は、三輪さんや松島さんが「風車事業に関して一部法律事務所に相談を行った気配がある」、「松島住職が、平成26年度『岐阜コラボ法律事務所友の会』の役員になった」と、やはりシーテック社側の警戒心をかきたてるような情報を流している。
しかし、このような関係者以外には知り得ないようなことまで、いったいどうやって探知したのだろうか。公安警察の密かな情報収集の不気味さが伝わってくる。(つづく)
吉田敏浩(よしだ・としひろ)1957年、大分県出身。ジャーナリスト。著書に『ルポ・軍事優先社会』(岩波新書)、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)、『横田空域』(角川新書)、『昭和史からの警鐘』(毎日新聞出版)など。























