◆飛散事故でばく露の利用者にすら説明会なし

6団体は10月16日、過去に何度も飛散事故が起きているにもかかわらず当事者に説明がないこと、建物を利用しつつ除去する場合、飛散事故が起きやすいことなどを指摘しつつ、「庁内に文書掲示を行うだけは不十分であり、説明会を開催して施工計画書に基づいて具体的な対策を説明し、かつそれに関する参加者の意見を聴取する機会を設けることが不可欠」として改めて説明会の開催を要望した。併せて過去にばく露した可能性のある人びとも含めた建物利用者に対して説明を尽くすよう求めた。

議論になっているのは、環境省が2017年4月に公表した「建築物等の解体等工事における石綿飛散防止対策に係るリスクコミュニケーションガイドライン」(2022年3月改訂)。建物などの改修・解体時に事業者に対し、住民やばく露の可能性がある人びとに説明会などで十分話し合って理解してもらうよう求めている。とくに一方的な説明ではなく、双方向のコミュニケーションの重要性を掲げているのが特徴だ。

環境省ガイドラインには、最高裁がいうようにチラシの配布や回覧板の利用についても記載があるのは事実だ。

しかし、同ガイドラインは、「解体等工事・石綿除去等作業の規模(解体か改造・補修か、全面工事か一部工事かなど)や工事・除去等作業の期間、石綿含有建築材料の種類やリスクの大きさ、リスクコミュニケーションの対象範囲(エリアの広さ、対象者の数等)、地域の特性を考慮して、適切な方法を選択します」と説明。続けて、「例えば、戸建住宅と大規模建築物等では、用いる方法が異なってきます。また、乳幼児、児童、生徒等が滞在する施設、あるいは、周辺に同様の施設が存在する場合などについては、丁寧な対応が可能な説明会などの方法を選択するようにします」とも記載している。

東京高裁や地裁などが入る合同庁舎は、もっとも飛散しやすい茶石綿を含む「吹き付け石綿」やけい酸カルシウム板2種が多数使われている。しかも建物の構造が複雑で空調を完全に止めることができないうえ、利用者が居る状態での施工とならざるを得ず、「(作業場内の)負圧を保つのが非常に難しく、難易度がきわめて高い」と過去に施工した除去業者の関係者が筆者に対して打ち明けるほどだ。実際にすでに何度も石綿飛散事故が起きていることがそれを裏付けていよう。しかも小学生など児童らの見学会も開催されている。工事期間が10年程度と長い。

つまり、規模が大きく工期が長いうえ、工事の難易度が高く飛散リスクが決して小さくないことに加えて、子どものばく露があり得る重大性からは、上記のガイドラインのいう「丁寧な対応が可能な説明会などの方法を選択」すべき内容に間違いなく該当するはずだ。6団体の要望は当然といえよう。

また同ガイドラインは、飛散事故発生時には、工事や石綿ばく露の詳細などを当事者に説明するよう求めている。ところが最高裁はそうした対応をしていない。

この観点からも、庁舎内の飛散事故で石綿にばく露した可能性のある当事者でもある6団体が説明会の開催を求めるのは当然のはずだ。

「発がん物質の扱いに関して、建物を利用する一般の人々が、どのような安全対策が採られているかについて、知る権利が保障されるべきことは疑う余地がありません」と6団体は要望書で強調している。

現状は最高裁が国のガイドラインを軽んじているといわざるを得ない状況だ。6団体は1カ月以内の回答を求めている。

「法の番人」たる裁判所が石綿を飛散させたあげく虚偽発表でごまかした“実績”からは、またも拒否して逃げる可能性が高そうだが、さて最高裁はどう回答するのか。

<要望を出した6団体>

・特定非営利活動法人 中皮腫・じん肺・アスベストセンター
・特定非営利活動法人 東京労働安全衛生センター
・建設じん肺被災者の会・東京 ひまわりの会
・中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会 関東支部
・アスベスト訴訟関東弁護団
・首都圏建設アスベスト訴訟東京弁護団

【関連写真】地下鉄・半蔵門駅で飛散したアスベストの原因は?

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