バグダッド市内中心部を制圧した米軍兵士たちとイラク市民 (2003年4月 撮影綿井健陽)

志願制軍隊では、現役の兵士・軍人による命令拒否が、その重要性を増している。

現代における兵役拒否のあり方を登場した順に整理すると、
1. 免除型兵役拒否
2.代替役務型兵役拒否
3.民間役務型兵役拒否
4.選択的兵役拒否
の大きく四つに分類することができる(兵役拒否のあり方は、動機、制度、文化、歴史、時代によって様々であるため、網羅的な分類ではない)。1~3は徴兵制を前提として国民に強制される兵役を拒否するものであり、4は、軍人・兵士による特定の命令拒否である。

1. 免除型兵役拒否
近代国家は国民に対して兵役に就くことを強制する一方で、国民の権利を保障すべきであった。国家権力は、個人の内面の自由を侵してはならないとする自由主義的観点から兵役の義務を免除するものが免除型兵役拒否である。

2. 代替役務型兵役拒否
信仰・良心のために武器を手にすることができない人は、非戦闘任務に就くことで兵役に代えることができるとするのが、代替役務である。兵役拒否者が、傷病兵の手当てや野戦病院の運営などの非戦闘任務に就いたことは、兵役拒否権が国家によって承認されるにあたって大きな役割を果たした。代替役務に就くことも拒否する人は、完全拒否者と呼ばれる。

3. 民間役務型兵役拒否
代替の非戦闘役務の場合、戦闘には加わらず武力も行使しないが、軍隊での役務を補完するものである。間接的にであれ武力を肯定する役務に就くことは戦争を容認することになり、兵役拒否者の平和主義的信仰や信念との葛藤を生む。

そこで、軍隊および戦争遂行に直接かかわらない農林業や福祉などの分野での役務が設けられるようになった。これによって、兵役を拒否する人の良心への負担が軽減された。同時に、国家の側からすると、完全拒否者を減少させ、国家の制度内に取り込むことに成功したのである。

もっとも、戦争遂行には幅広い産業がかかわっているのだから、戦争とかかわりのない分野など存在しない、福祉分野での役務に就いたとしても、そのことで財政的に政府を利することなり、戦争にその財源が使われるのではないかという批判がある。このような考えに基づいて、民間の役務も拒否し、完全拒否者となる人もある。

4. 選択的兵役拒否
これは、軍隊での役務には就くが、どのような命令にも服従するわけではなく、自らの良心に鑑み、違法あるいは非人道的な特定の戦争や作戦、命令は拒否するというものである。選択的兵役拒否の概念は二つの点で1~3の兵役拒否と大きく異なる。

第一には、武力行使一般の正統性ではなく、個々の命令の違法性を問うという点である。つまり、個々の兵士である個人が国家の政策を直接評価し、不正に加担することを拒否することで不正を正そうとする市民的不服従の側面を有している。これは、国家機関内における政策の実施拒否である。

政治哲学者のウォルツァーは、これを、「道具となることを拒否すること」と表現している(1)。国家がこのような行為を許容することはむずかしい。選択的兵役拒否は、個別の命令/作戦/戦争に対する実施拒否として処罰の対象となる。

第二には、兵士は違法なあるいは非人道的な命令には従わない<抗命義務>を負うという点である。この点については後述する。

兵役拒否は、国連では人権保障の観点から、個人の良心に従って、軍隊に入隊しない権利や、戦闘任務には就かないことが権利として承認されている。しかしながら、各国の国内法は、こういった兵役拒否権を十分に保障しているとは言い難い。

兵役拒否権規程は各国それぞれで多様であるが、兵役拒否者として承認されるための良心の審査が厳しかったり、良心を宗教上・倫理上のみに基づく場合に限定していたり、非軍事の民間役務の期間が軍事役務に比べて長期間であったりする。職業軍人に対する選択的兵役拒否権は、ほとんどの国において明記されていない。(続く)

(1) マイケル・ウォルツァー『義務に関する十一の試論―不服従、戦争、市民性―』山口晃訳、而立書房、1993年、180頁。

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