ニジェール川を進む客船で、夕陽を迎える。(ニジェール川・マリ 2016年/Niger River,Mali 2016、撮影 岩崎有一)

私が初めてアフリカの地を踏んだのは、1995年のことだ。以来、アフリカ地域の各国各地を訪ね続けているが、まだまだ、広大なアフリカの、ほんのひと握りの風景に触れたにすぎない。

2016年2月、私は、アフリカ西部の内陸国マリ中部の町モプティから客船に乗り、北を目指した。一等寝室・二等室ともに満席だ。船倉には雑穀とコメが隙間なく詰め込まれている。船室から屋根にかけては、水入りペットボトル、缶詰、鍋、竹かご、生野菜、自転車、自動車用オイル、ジャガイモ、炭、鶏、反物、バイク、ヤギなど、あらゆる生活物資がびっしりと積まれていた。人と荷の塊となった船は、ゆっくりとモプティの岸辺を離れ、ニジェール川を進み始めた。

南北にかけてひょうたん型に国土が広がるマリでは、2012年から現在まで、武力闘争が続いている。同国北部の自治拡大・分離独立を求める現地勢力に加え、リビアのカダフィ政権崩壊に伴い武器とともに流入した外国人勢力や、AQIM(イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ)と共闘する勢力など、複数の出自の異なる勢力が、マリ政府に対し散発的に攻撃を繰り返してきた。

そのため、北部での移動は、現地の人々にとっても難しいものとなってしまっていた。私も現地の人々に倣い、水路を選んだ。

客船の従業員からお茶をごちそうになった。(ニジェール川・マリ 2016年/Niger River,Mali 2016、撮影 岩崎有一)

かつては外国人も多く訪ねた地域だが、今はMINUSMA(国連マリ多面的統合安定化ミッション)関係者以外に外国人を見ることは稀だ。船内は無論、船外に出ても、ひときわ目立つ私に向けて、あちこちから視線が刺さってくる。

ただ、彼らの視線は、刺さりはするものの、痛いものではない。すれ違う船上の人々と目が合えば、こちらに向けてゆっくりと手をあげてくれる。船内で私の挙動をうかがっていた乗客も、やがて、バナナや落花生を黙って手渡し、お茶を振る舞ってくれた。夜には互いに、世界情勢談義に花を咲かせもした。
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