写真右に写るキックボードに乗り、丘陵を駆け下りた(ウィンタートン・南アフリカ 2017年/Winterton, South Africa 2017 撮影:岩崎有一)

ドラケンスバーグでは、どこにいても手の届くところに大自然がある。観光客向けのアトラクションは、いずれもこの大自然とセットになったものだ。アミューズメントパークや大型ショッピングモールのような人工物は何ひとつない。切り立った山脈となだらかな丘陵が常に目に入ってくるこの地域では、「雄大な」と形容したくなる風景がどこまでも続く。宿泊施設も美しく整ったものが潤沢にあり、朝も夜も、シンプルだが滋味深い地場の食材を使った料理が供された。

いくつもの森を抜けながら、ゴールの沢を目指す。普段運動をしていない私にとっては、ハードなトレッキングだった(ドラケンスバーグ・南アフリカ 2017年/Drakensberg, South Africa 2017 撮影:岩崎有一)

また、この地域では農業従事者が多く、家畜に加え、馬もあちらこちらで見られた。ドラケンスバーグ少年合唱団学校の校長アンドリューが言うように、少年が伸び伸びと成長するための環境として見ると、日々を自然と共に暮らすドラケンスバーグ地方は、確かに1つの最適解のように感じた。また、大自然に身を委ねてひとときを過ごしたい人にとって、この地は絶好の滞在先だとも感じた。

滞在したコテージ。広い(ドラケンスバーグ・南アフリカ 2017年/Drakensberg, South Africa 2017 撮影:岩崎有一)

ドラケンスバーグの自然も宿も素晴らしいと私がクリスに話すと、「確かに」と言ってから少し間を開け、彼はこう話していた。クリスは、私設の観光案内所を営んでいる。

「観光しかないんです。大豆など輸出用農産物の価格は低下が続いており、貴金属が取れるわけでもない。ヨハネスブルグやダーバン(のような大都市)からも遠く、企業を誘致することも難しい。ドラケンスバーグ少年合唱団の名声に頼るだけでは、どうにもならない。私たちが生き残っていくためには、観光に力を入れるしかないのです。」
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