ヤズディ住民を救出するイラク軍ヘリ。(イラク国防省映像)

 

2014 年8月、過激派組織イスラム国(IS)によるシンジャル制圧。数万人が、かろうじて町から脱出し、クルド自治区に逃れることができた。一方、幹線道を閉ざされ、逃げ場をなくした約1万の人びとは、シンジャル山で包囲され、飢えと渇きに苦しんでいた。

それまで、国際社会だけでなく、イラク国民ですらヤズディについてはほとんど知られていなかった。IS殺戮に晒された住民の悲痛な訴えを受け、イラク軍や米軍主導の有志連合軍が、孤立したヤズディ住民のために輸送機で上空から食糧投下の作戦を展開。この時期、ようやく「ヤズディ教」とは何かがクローズアップして報じられるようになる。
【関連記事】虐殺、拉致…ISに蹂躙された街シンジャルを行く

オバマ大統領は2014年8月7日、「ISのヤズディ教徒虐殺とクルド地域に迫った攻勢を阻止する」として、米軍がイラク領内のIS拠点に限定空爆を開始。(ホワイトハウス公表映像)

 

ただ、忘れてはならないのは「大量破壊兵器がある」などの理由で、イラクの宗派・民族バランスを無視して戦争を開始したのはアメリカである。IS台頭の一因を作り出し、イラク国民が今日のような状況に直面することになった責任の一端を担っているといえる。そしてこの戦争を日本が支持したことも忘れてはならない。

ISが制圧したシンジャル奪還の攻略突撃をかけるクルド・人民防衛隊(YPG)。ISの前線を突破し、シンジャル山で孤立した住民の一部を救出した。(2014年9月・YPG映像)

次のページ:結婚式で出会ったミルザ夫婦との再会「復讐のため、家族を養うため」とクルド兵に

★新着記事