<現地報告>アフリカ最後の植民地・西サハラを行く(1)プロローグ 15年ぶりに訪れた現地は大変化

一面の砂景色からは想像しにくいが、西サハラには現在、約50万の人々がいる。1975年の「緑の行進」と呼ばれるモロッコ人の入植開始以降、西サハラの民サハラーウィとモロッコ人が、同じ町の中で暮らしてきた。それぞれの町に、それぞれに異なる町の特徴がある。本連載前半では、西サハラを構成する主要な町の様子を報告する。

◆通勤客で混み合う砂上のビジネス街

真っ直ぐに伸びるアスファルトの路面は、ところどころ、押し寄せた砂に埋もれている。
「ようこそ。サハラの滞在を楽しんで。ノープロブレム」
砂漠に囲まれた検問所のモロッコ憲兵は、陽気な声でこう話し、こちらにパスポートを戻した。検問所の先にある巨大なアーチをくぐると、水の匂いが濃厚に香ってくる。
信号のある交差点をいくつも通り過ぎながら、住宅街を抜けて中心部へと進む。ホテルと、背の高いビルが並んでいる。通り沿いには、テーブルと椅子をぎっしりと並べたカフェテリアが続き、ノスノスと呼ばれるモロッコのカフェオレや、お茶を楽しむ人々で賑わっていた。

エルアイウン北部の入場門。アーチの先に、街並みが広がって見える。(エルアイウン・西サハラ/El Ayoun, Western Sahara 2018 撮影:岩崎有一)

エルアイウン中心部へ続くメッカ通り。左手の建物は大会議場。写真中央には、モロッコ国王ムハンマド6世の巨大な肖像写真が掲げられているのが見える(エルアイウン・西サハラ/El Ayoun, Western Sahara 2018 撮影:岩崎有一)

エルアイウン市内から海岸部へ伸びる道。強い横風が砂を運び、道を覆う。除雪車ならぬ“除砂車”が、砂を掻き出していた(エルアイウン・西サハラ/El Ayoun, Western Sahara 2018 撮影:岩崎有一)

円形交差点には大きな噴水が設けられ、吹き出る水の音が途切れることはない。大通りの両側や中央分離帯に掲げられた真っ赤なモロッコ国旗もまた、途切れることなく並び、はためいている。西サハラ最大の都市、エルアイウンに入った。

西サハラを占領しているモロッコは、西サハラ全体を南北二つの地区に分けて、自国の行政区分に取り込んでいる。エルアイウンは、その北側の中心を担う町であり、約21万(モロッコ国勢調査 2014)の人口を抱えている。
壮麗な会議場がそびえる町の中心部は、官庁街とビジネス街を合わせた様相だ。メイン通り沿いには、銀行をはじめ様々なモロッコ企業の“エルアイウン支店”が並ぶ。高級ホテルやレストラン前の車寄せには、高級車がずらり。道を歩く人々は、スーツ姿だったり、アイロンがきっちりとあてられた民族衣装だったりと、小綺麗な出で立ちをした人が多い。

エルアイウン中心部。道の両側に様々な企業の支店や飲食店が並ぶ(エルアイウン・西サハラ/El Ayoun, Western Sahara 2018 撮影:岩崎有一)

エルアイウンは、8kmにわたって町を斜めに走る“国道”5号線を中心に、複数の市街区からなる町だ。それぞれの市街区は、学校や病院、市場と商店街、モスク、そして住宅街によって構成されている。循環バスが中心部と各市街区を結び、昼も夜も住人を運び続ける。流しの乗合タクシーも、途切れることがない。朝夕の通勤通学ラッシュ時には、車内も道も混雑していた。

エルアイウンの旧市街(エルアイウン・西サハラ/El Ayoun, Western Sahara 2018 撮影:岩崎有一)

エルアイウン旧市街の市場周辺(エルアイウン・西サハラ/El Ayoun, Western Sahara 2018 撮影:岩崎有一)

住宅街の円形交差点に、噴水が備えられていた。夜になっても水は吹き出し続け、周囲に水の香を漂わせている。砂漠地帯にいると、水の匂いは、とても芳醇なものとして感じられてくる(エルアイウン・西サハラ/El Ayoun, Western Sahara 2018 撮影:岩崎有一)