人民の意見を尊重し、人民の意思を反映した政治を
リム では、人民はどういう経済運営を望んでいるのでしょうか? 昔のように国が平等に配給をくれることを望んでいるのですか?
キム どんなに経済に長けた人間が総理になったって、どんな人間が委員長になったって、今のように人民の意思を無視し、誰か一人の思い通りになっている限り、この国の経済は絶対に再生できないだろう。

実際に経済活動を行う民衆が正しいと思って行動するやり方がまっとうな方法であり、民衆の意思を尊重し、民衆の自由な「投票」の通りにしてこそ、経済の発展は望めるのだと思う。
今のように民衆を身動きできなくしている状況では不可能だよ。

私を含め一般人民は、学校でちゃんと勉強して経済のことがよく分かっているわけではないのだから、国家が経済を再生してくれることを望んでいる。われわれは国が出した政策について「いいんじゃないか」とかなんとか遠くで判断するだけで、政策を打ち出すことはできない。
経済に明るい人でなければ、国の経済をどうするか決められないではないか。民衆が政策を打ち出せるようなら、民衆が統治し、政治をしているってことだろ?

政治をする人たちがちゃんと方法を示して、それに対する意見を人民に聞いたうえで実行すべきだ。なのに、そんなことはお構いなしに自分たちの都合で、つまり独裁政治のやり方で無理矢理に経済を動かしている。誰かにとっては都合のいいやり方なんだろうが......。
とにかく、国は政策を打ち立てたら人民に意見を聞かなければいけないのに、今はそうなっていない。

これは結局、今の選挙や投票が形だけのものになっていることと繋がっている。今の選挙は、投票に行かなければ政治的に悪者扱いされてしまうから、仕方なく出かけるのであって、自由に意思を表せるものではない。
われわれは子供のころから自由に意思表示する能力を持たないように仕込まれていて、上がやれと言う通りにしなければならない、権力の言う通りにするのだ、そうしなければ反逆罪に問われる、と思い込まされてきた。

外国との貿易にしてもそうだ。貿易も個々人が自由に、多方面でできるようにしなければいけないのに、まったくそうなっておらず、全て国家が独占している。一般の人がちょっと何かしようとしても、承認を受けるのが本当に大変だ。
国家が配給を続けるべきかどうかという問題もそうだ。

昔のように国家が配給をくれるとなれば、年配の人たちは皆喜ぶだろう。以前のように一ヶ月分をきちんと、幹部も一般人民も関係なく公平に、働いている人とその扶養家族の分まで、一日のもれもなく三〇日分をくれるのであれば喜ぶに違いない。
けれど、今の配給制度は、人民に回るはずの食糧を、幹部が全て横取りするためのものだ。朝鮮戦争後の復興時期に配給制が登場したというけれど、当時、幹部と一般人民の間に差別はなかった。
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