第四は価値観の変化である。住宅の闇の売買を助長する決定的社会形態が八〇年代に芽を出し始めた。
国家住宅は表向きは個人財産ではないことになっているが、一九二〇年代までに生まれた共和国第一世代が引退を迎える七〇年代になると異変が起こった。
住宅配給が、幹部たちにとっての老後の生活保障であると同時に、勲章のような意味を持つようになったのである。各地に「一号特閣」(金日成と金正日の別荘)が建設されると同時に、金日成や金正日が機関別あるいは個人別に幹部たちに住宅を与える「住宅配慮」「特別待遇」が始まったのだ。

例えばこの頃、大都市には高級アパートが、地方には高い塀を張り巡した高級一戸建て住宅が続々と登場した。
この波に乗って、幹部たちの間で「マイホームを手に入れよう」という一大ブームまで巻き起こった。
また、七〇年代後半から八〇年代にかけて金正日が行った「大建築運動」は、社会主義社会を変化させる大きな要因となった。

まず、各種の名目で行われた建設事業を通じて莫大な国家資材と資金が不正に流出した。
「四・一五プレゼント」(金日成の誕生日に国民に配られる)のような大々的な贈り物ブーム、外貨調達ブームにおいてもそれは同様だった。
そんな中で、農民市場が発達し、当時発生し始めていた貧富の差が個人消費欲を刺激し、これらが社会変化を牽引する力となっていった。
さらに社会主義の供給制度(配給制度)にはひびが入り始めた。

時を同じくして、外貨を旺盛に消費することが可能な中国・ロシア・日本からの帰国者たちや、海外に縁故のある者たち、「在外家族」(注4)たちの住宅需要が急増して、金のある者に住宅は優先して供給された(注5)。これも社会主義的な住宅供給秩序を破壊するのに一役買った。
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