この光景は、2002年6月22日のこと。日韓同時開催のワールドカップが行われている真っ最中であった。彼らが観戦している映像が日本と韓国のどちらの試合なのかは知らないが、とにかくワールドカップの映像であることは間違いない。彼らをこれだけ虜にする試合が、自国で開かれている。それを見ない日本人がタンザニアにいる。理解できない。なぜ、どうしての嵐が始まる。

わざと彼らから距離をとったのも、しめしめと思ったのも、この質問をされるのが嫌だったから。彼らをおっかなく感じたわけでもなければ、独り静かにしていたいわけでもなかった。
私は、サッカーにはあまり興味が無い。この、サッカーに関心無しということがどうしても伝わらないことが、とってもめんどくさかったのだ。

「一都市で開催されているわけではない」「無料でスタジアムに入れるわけでもない」「チケット入手が困難」「日本と韓国は、電車やバスで移動できる距離ではない」など、遠まわしこたえるが、彼らはまるで解放してくれない。

サッカーに関心がないと言っても、「日本には『世界のナカタ』がいるじゃないか」「あんた怪我してるのか」「やっぱり日本人はサッカーより空手が好きなのか」と、私がサッカーに関心がないことを受け入れようという姿勢は皆無。

もう勘弁してくださいという気持ちになって、決して正確ではないのだけれど、"I do not like football."と言って始めて、「なぜ」が止んだ。私に向けられたのは、哀れみの表情。中には、人差し指をこめかみにあて、あいつ頭おかしいと言わんばかりの輩もいた。

互いに残るのは、徒労感ばかり…。こんなやりとりを、ここミクミのみならず、私はあちこちで交わしていたのだった。
ご存知のとおり、2010年にワールドカップが南アフリカで開催される。
依然、私はサッカーには関心がないけれど、ワールドカップを迎える現地の人々には強い関心がある。サッカーに関心がないことは内緒にして、南アフリカを再訪しようと考え中だ。

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