平安南道のある富裕層の住宅内部。大型の薄型テレビ、ソファが見える。木目調の「レザー」と呼ばれる敷物を床に敷いている。内装や調度品に金をかけるのは、住まいに対する所有意識が強いことの現れだ。(2008年初めに撮影されたビデオをシン・ドソクが入手)

平安南道のある富裕層の住宅内部。大型の薄型テレビ、ソファが見える。木目調の「レザー」と呼ばれる敷物を床に敷いている。内装や調度品に金をかけるのは、住まいに対する所有意識が強いことの現れだ。(2008年初めに撮影されたビデオをシン・ドソクが入手)

 

〈住宅売買取締り現場取材〉国家住宅の闇取引に介入して賄賂を求める政府の役人 1
二〇〇六年九月、国家住宅の売買という非社会主義的現象を徹底的に阻むべく、金正日総書記の「方針」が出された。商売が成功して金を手に入れた住民たちの間に広がっている、国家住宅を「買う」という行為を阻止しようという提議書が、将軍様によって批准されたのだった。
今回の記事に登場する支配人は、何年か前までは地方の小さな工場の一労働者に過ぎなかった。

出身身分の良くない彼は、幼いころから苦労してきたのだが、そんな彼の気質はむしろジャンマダン(市場)に向いており、商売で成功してついに磁器工場の支配人にまで上り詰めたのだった。方々で金貸しもしている彼は、少し前に大金を投じて大きな家を買い入れた。
こんな彼を目の敵にする者もいて、公式の収入に対して支出が不自然に多くて怪しいという周囲からの密告が後を絶たなかった。

リムジンガン記者のリ・ジュンはこの磁器工場支配人の友人であり、別件の取材のためにたまたまビデオカメラを持ってこの支配人の家に立ち寄った際、偶然住宅売買取締りの検閲員が支配人の家を来訪した。この記事は、機転を利かせたリ・ジュンがそっとビデオカメラをまわしたものに基づいたものである。

住宅売買禁止の方針が出されてから二ヶ月が経った二〇〇六年一一月、周辺住民の密告を受けて支配人の家に乗り込んだ検閲員を、支配人がどのようにして丸め込むのか、一方の検閲員はどのように賄賂を引き出そうとするのかなど、現在の北朝鮮の住宅闇取引取締り実態の一端が、見事に描き出されている。
登場人物は次のとおりだ。

支配人――前述のとおり、商売に成功して最近小さな地方の産業工場の支配人になった。そして、大きな家を買ったことが今回の「方針」にひっかかった。
検閲員――○○市人民委員会(地方政府)の取締り担当官。
支配人の娘――中学校を卒業して、○○人民委員会の某部署に勤め始めた。
支配人の妻――扶養家族として豆腐売りの商売をしながら、自宅で犬や豚の飼育もしている。
取り締まる方も取り締まられる方も、今回の件を金でもみ消そうとする方向に話が進んでいく。
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