教師は一瞬、むっとしたような顔をしたが、すぐ元の表情に戻った。
「一一月だったかしら? いえ、一二月からだわ。少年団の子たちの間で自主的に始めたんですよ。こういう《親負担》、以前はなかったんですけどね」
「子供一人で米一キロなら、一クラス四〇人だから、ひと月四〇キロにもなるじゃない!」

「でも、私たち教員は国から何にももらえないんですもの。まあ、私たち教師は、親御さんたちのおかげで食べていけるようなもんですよ。ホホホ」
「でも、限度ってものがあるでしょう? いくら保護者に頼るっていったって......」

〈やだやだ。先生のほうはどんどんずうずうしくなってるってのに、私の言葉にはだんだん勢いがなくなっていってるじゃないの。〉
先生はこんな私をあざ笑うかのように、噛んで含めるように話し始めた。

「だけど、親御さんたちにとっても、ひと月一キロだったらたいしたことないんじゃないですか?」
「ひと月一キロが!? 私が言いたいのは、つまり、こないだの夜に先生がうちに来た時、生活が苦しいって言うから、ヒョクに持たせたじゃないですか。なのに、また子供たちをよこすんだもの......」

「私が行かせたんじゃなくて、自分たちで、少年団で組織してやってるんです。私にも、どうしようもないですよ。それに、集めたのを合わせて四〇キロって言うと多いと思うかもしれないけど、一軒当たりひと月米一キロぐらい、どうってことないんじゃないかしら?」
「......!」
「そうじゃありませんか?」
あきれた言い草に、開いた口がふさがらなかった。人の気持ちを逆撫でするその言葉に、こっちも、ついきつい言葉が口をついて出てしまった。

「あのね、一人一キロずつって言ってもね、結局、《税外負担》じゃないですか。学校で自分の子供の立場が悪くなるかと思って言い出せないだけでね、言ったら言ったで、自分の子が学校で隅っこに追いやられるのは目に見えてるし。こういうの、どこか訴えるところがありゃいいんだけど、どうせどこも聞いちゃくれないだろうしね」
「......」
「それにしても、ひどいよ! この国の人間は、先生に限らず、みんな生活のために苦労してるってのに、先生だからって子供から搾り取るなんてさ、それがものを教える教師のすることかね!」

「あら、『搾り取る』だなんて、それはひどい言い方だわ。もらっているのは親御さんたちの心遣いであって......」
先生の言葉は私の怒りに油を注いだ。私は声を荒らげた。
「心遣いだって? 少年団をよこすなんて、あんなの無理強い以外の何でもないでしょう! 子供たちのことを先生に文句言いたいわけじゃないんだけどね、あれはまったくの無理強いですよ!
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