「全員で〈栄誉の赤い旗〉学校の争取運動を力いっぱい繰り広げよう」。中学校の壁に掲げられたスローガン。(2006年4月某中学校にて ペク・ヒャン撮影)

「全員で〈栄誉の赤い旗〉学校の争取運動を力いっぱい繰り広げよう」。中学校の壁に掲げられたスローガン。(2006年4月某中学校にて ペク・ヒャン撮影)

 

国の配給がもらえない教師たち
とりあえず言いたいことを言うと、いくぶん気持ちも落ち着いてきた。それでも「親負担」に対する不満はいっぱいある。私は語気を緩めて教師に物言いを続けた。

「そうは言っても、やっぱり母親だね。これは先生に愚痴るんだけど、子供同士でやってることに親が口出ししたら、子供が学校で何か言われるんじゃないか、うちの子がまたいじめに遭うんじゃないか、て思うわけよ。

かといって、『先生にはこっそり渡したよ』なんて言ったら言ったで、『先生に媚売ってる』とか言われるだろうし。出さなきゃ出さないで、『あるくせに出さない』とか言われるだろうし。
とにかくあの子たち、袋持ってずっと突っ立ってるんだから。『それで、今度は何の米なの?』って訊いたら、『分団で毎月一キロずつ出すことになりました』ときた。

まったく、ちょっとやり過ぎだよ。そりゃあ、何かの「心遣い」で保護者が米をくれることもあるだろうし、それはそれで有り難くもらったらいいけど、毎月生徒全員の家から一キロずつというのは、やり過ぎですよ」
次第に心臓の高鳴りはおさまってきた。自分でも倒れるんじゃないかと心配だったが、先生の冷静な声が耳に聞こえてきた。

「ヒョク君のお母さん。教員は国家の配給とは全く無縁なんですよ」
「えっ? 優遇されてるんじゃないの? 学校の先生たちは配給をもらえないんですか? じゃあどうやって生活するんです? 家族の誰かが商売でもやらないとやっていけないじゃない」

「私たち分科教師(注1)は、分科長以外はみんな未婚女性なんです」(注2)
「分科長先生の家の世帯主(夫)は何の仕事を?」
「教員をしています」

「どこで?」
「大学で」
「大学の先生なら、いい暮らししてるんでしょ?」
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