今回のデノミは、新ウォンの信用失墜と物不足によってハイパーインフレを招いてしまった。
その結果、商売に依存していた庶民の経済活動が大きく麻痺した。

どんどん物の値段が上がるので「値段」のつけようがなくなった。
新ウォンに対する信用失墜で、現金を手にすることを忌避するようになった。

食糧をはじめとする物資の流通が滞り、誰もが商売あがったり、つまり現金を得る術が、急速にしぼんでしまったのだ。
これは食糧を手に入れる「権原」が剥奪されてしまう人発生することを意味する。

北朝鮮の最下層の人々は、その日食べる食糧をその日の商売や日雇いのヤミ労働で稼いだ金で賄っている。貯蓄などない。
流通の麻痺、商行為への統制、販売不振、ヤミの仕事がなまなるということは、たちまち飢えに直面することを意味するのだ。

このたびの経済混乱で、多くの人が現金を得る術を失ってしまったことは想像に難くない。
配給もない中、食糧にアクセスする方途が絶たれた人々はいったいどのようにして食べているのだろうか。

この度の北朝鮮のハイパーインフレが、いつどのようにして止まるのか想像がつかない。
金正日政権が大胆に政策を改めることが不可欠だからだ。

いずれ民衆の暮らしは忍耐の限界を超えてしまうだろう。隣国の人道危機が目の前に来ている。
だがそれは、ハイチと異なり人災によるものである。 (了)

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