今年の肥料不足については、韓国の北朝鮮専門メディアである「デイリーNK」が報じている。(4月26日付「"北、春の'肥料不足'が懸念...市場にも肥料がない"」)。デイリーNKによれば化学肥料は統制品であるにもかかわらず、毎年春になると(1)肥料工場からの生産物の横流し(2)協同農場への割り当て分の横流し(3)海外からの援助の横流し、などを経て市場に並ぶのだが、今年は市場で見かけないという。

これは横流しすらできないほど、北朝鮮の肥料が不足していることを表している。北朝鮮ではこれまで、数十万トンの化学肥料を外部から調達し不足分を補っていた。しかし1999年以降、韓国から毎年30万~40万トンあった肥料援助は、2008年以降停止されてしまっているのに加え、中国などから十分な量を輸入するにも外貨が足りない。

また、化学肥料は工業製品であるため、国内で生産して需要をまかなおうにも、必要なエネルギーと材料を十分に準備できない。つまり北朝鮮の肥料問題は、経済難によって深刻になる一方なのである。このように、個人が化学肥料を入手することが困難になったことが、上記の強奪事件の背景にあるものと考えられる。

アジアプレスの通信員は「こうした事件は春にはよく起こることだが、今年はその程度がひどい」と語った。また、運搬途中にも運転手による横流しや、道路を検問する軍人による徴収などがあり、「初めは30トンで出発しても、到着時には20トンになっている」有様だという。肥料をめぐるこのような争奪戦は、農繁期である5月末まで続くものと予想される。
アジアプレスでは中国と隣接する北朝鮮北部の数都市に、中国の携帯電話を搬入して北朝鮮内部の情報を収集している。(李鎮洙)

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