デノミで不穏な空気広がる
昨年実施されたデノミ措置の概要は次のようなものだった。

(1) 旧来の通貨単位ウォンを100分の1に切り下げる
(2) 一世帯あたり旧紙幣10万ウォンを交換の限度とする
(3) 10万ウォンを超えた金額は銀行に預ける。但し上限は50万ウォンまでとする。
(4) 銀行に預けた金額は100分の1では無く、10分の1で取り扱う(預金は自由に引き   出せない)。
(5) 一人当たり500ウォンの配慮金を分配する

交換限度額以上の旧貨幣は紙くずになってしまうわけで、実質的には当局による財産没収措置であった。
キム・ドンチョルはじめ内部の取材パートナーたちの報告を総合すると、デノミ断行の翌日から、住民たちは生活防衛のために、旧ウォンが無効になる前に早く物資を買ってしまおうと商店に押しかけたり、幹部に露骨に文句を言ったりという現象が発生していた。

全国的に住民たちの急な不満の高まりはこの10年見られないほどだったと思われる。
「誰かが火をつければ一気に燃え広がる可能性があった。財産を一夜にして失っ庶民の怒りは強く、雰囲気は険悪だった」と3月にインタビューした元山市から越境して来ていた女性も筆者に証言した。

金正日政権が、「不穏な空気」の広がりを察知して、騒乱の起こる可能性のある地域に、先手を打って鎮圧のための部隊を送り込んでいたものと思われる。
「天安」艦撃沈事件で南北朝鮮の緊張が高まっている中、北朝鮮国内の動向から目が離せない。
今回のリポートの続報も含め、内部情勢を伝えていきたい。

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