記者:「なるほど、じゃあ金も出ますね」
女性の肩越しに、数人が並びせわしなく働いている姿が見える。シム記者が再び尋ねる。

記者:「あの若い女の子たちは学生みたいですね」
女性:「その通り、学生たちですよ」

記者:「はは、金が採れるんなら、学校に行く気にはならないですよねえ」
手前には身丈ほどのシャベルを振るう少年がいる。来訪者である記者に関心があるようで、ちらちらと視線を向けてくるが、黙々と泥を掬っている。
記者:「君はいくつだい?」
女性:「一二ですよ」先ほどの女性が代わりに答える。

記者:「大変だなぁ、あの年で生活戦線に飛び込まければならないなんてねぇ。それでも利益はきちんと出るのでしょう?」
女性:「いや、借金を返せばあまり残りませんよ」

記者:「借金?」
女性:「この仕事を始めるのにお金がかかりますからねえ......」
(シャベルなどの道具代と、工場の幹部にまとまった「場所代」を払うものと思われる)
カメラはピンク色のシャツを着た少年の方に向かう。

記者:「君はいくつ?」
男の子:「卒業したばかりです(一六歳もしくは一七歳)」

記者:「どれくらい稼ぐの?」
男の子:「あのおばさんと同じくらいですよ」

裸足のままくるぶしまで泥水に浸かりながら、少年はぶっきらぼうに答えた。
しかし北朝鮮の庶民はたくましい。金属の製錬のために工場に運び込まれた土砂の滓から金を取りだしているのである。まさに「錬金術」。かつての「忠誠の外貨稼ぎ」労働の経験があるから、北朝鮮の庶民にとって砂金採りはお手のものなのだ。
取材 シム・ウィチョン
二〇〇八年一〇月
整理 リ・ジンス

注1 製錬----鉱石を加工することによって、金属を取り出す過程を指す。
注2 沈殿池----製錬の過程で発生する廃水を処理するための施設の一つ。水に含まれる比重の重い金属類を沈下させ水を綺麗にする。結果として池の底に金属を含む土砂が溜まるため、沈殿池の跡地は砂金の効率よい採集に適した土地となる。

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