それでもかつては賄賂を使えば、通行証の発給はそんなに難しいことではなかったのだが、審査が厳しくなっている。
この通行証がないと列車の切符を購入できない。

仮に通行証なしで国境近くの都市までバスや徒歩でたどり着いても、街頭で通行証や持ち物検査が頻繁にあり、通行証を持たない者は「脱北の疑いあり」とみなされて検挙される。

また国境地帯の全世帯では、毎日「宿泊検閲」か行われている。
登録された人員が逃げずにいるかどうか、通行証のないよそ者を泊めていないかを調べるのである。

さらに、国境の川豆満江、鴨緑江に通ずるすべての道は、地元住民、警察、国境警備隊による三重の検問がある。
今や、国境にたどり着くこと自体が、非常に困難になっているのだ。

二つ目の理由は、脱出先の中国の社会変化だ。90年代から脱北難民を助け匿ってきたのは中国籍の朝鮮人(朝鮮族)であった。
朝鮮族は約200万人。うち北朝鮮と国境を接する豆満江流域の延辺朝鮮族自治州には85万人ほどが居住していたが、韓国や日本などの海外や、北京、大連などの中国内の大都市への人口流出が著しく、国境地帯の朝鮮族コミュニティーは急速に解体しつつある。
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