続く2005年にも「延辺天池工業貿易有限公司」は茂山鉱山との取引を拡大していく。同年9月、南坪鎮を訪れたアジアプレスの取材に対し、南坪鎮の選鉱工場の管理主任であるキム・ウォンヒ氏は「1日に130台のトラックで6000トンの鉄鉱粉を輸入している」と語っている。これは年間に換算すると軽く100万トンを超える量となる。さらに「2006年には200万トンの輸入を予定している」と語るなど、中国側の並々ならぬ期待がうかがえた。

選鉱に使われる機械。同様のものが北朝鮮にもあるが、老朽化した旧ソ連製の設備のため能力が落ちる。2005年8月 撮影:アジアプレス ©アジアプレス

選鉱され68%にまで鉄の含有量を高められた鉄鉱粉は再びダンプトラックに積まれ、中国内の製鉄企業に販売されていく。2005年8月 撮影:アジアプレス ©アジアプレス

 

また2005年10月(06年1月とも)には中国と茂山鉱山の間に大きな契約が結ばれた。中国側では吉林省最大の鉄鋼企業である「通化鋼鉄集団」が代表となり、中国最大級の鉄鋼企業「中鋼集団」、そして「延辺天池工業貿易有限公司」の3企業が北朝鮮の茂山鉱山開発のために、70億元(約900億円、当時)を投資するというもの。

投資の内訳は50億元を鉱山開発のための設備導入へ、そして20億元を通化市-茂山間の道路・鉄道・送電システムの整備にあてるとのことだった。また、投資の見返りとして中国側は「茂山鉱山の採掘権を50年間取得」し、「年間1000万トンの鉄鉱石を持ち出す」という内容が含まれていた。
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